防御率、被打率はいずれも自己ワースト
シアトル・マリナーズの岩隈久志が、9月9日(日本時間)のアスレチックス戦に先発し、7回途中まで2失点に抑え15勝目を挙げた。岩隈の15勝は2014年以来2度目だが、シーズン15勝を2度以上記録した日本人投手は3度の野茂英雄氏と2度の松坂大輔に次いで3人目となる。
勝利数は自己最多に並んだ岩隈だが、防御率はMLB5年目で最も悪い3.96。被打率.276や、1イニングあたりに許した走者の数を表すWHIPも1.29と自己ワーストである。29試合に先発し、5回未満での降板は3試合と大崩れした登板は少ないが、内容は決して良いとは言えない。昨年までとの大きな違いは、ゴロアウトよりもフライアウトのほうが多くなっていることだ。
MLB移籍後、岩隈のゴロアウトとフライアウトの比率(GO/AO)は以下の通りである。
2012年 1.52
2013年 1.27
2014年 1.28
2015年 1.46
2016年 0.84
昨年まではゴロアウトのほうがはるかに多かったが、今年はフライアウトが激増している。その影響か、被本塁打数も26本とMLB5年目で最も多い。
スプリットを投げる割合が激減
低めに球を集め、ゴロを打たせることが持ち味だった岩隈が、なぜフライを多く打たれる投手になってしまったのか。その理由は、球質よりも球種に関係がありそうだ。
MLBのデータサイト「ファングラフス」によれば、岩隈が投げた昨年と今年の球種の割合は以下の通りである。(左が2015年、右が2016年)
ストレート
49.0% → 45.8%
スライダー
7.4% → 18.1%
カットボール
0.9% → 8.9%
カーブ
7.5% → 9.1%
スプリット
25.3% → 18.1%
一目でわかるように、昨年と比べて今年はスプリットの割合が減り、カットボールを投げる割合が増えている。ピッチングスタイルを変えたのか、変わってしまったのかわからないが、昨年までのようにスプリットで低めを突いて、空振りを奪ったり、ゴロを打たせたりすることが少なくなった。
マリナーズは、地区優勝こそ厳しくなったが、ワイルドカードでプレーオフに進出する可能性はまだ残されている。勝利はもちろんだが、岩隈には本来のピッチングをいま一度取り戻してほしい。
(※)ゴロアウト/フライアウト比率(GO/AO )
ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。ゴロアウトとフライアウトが同じ 数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い投手となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)