防御率やWHIPは渡米後ワーストの数字
シアトル・マリナーズの岩隈久志投手は、今季ここまで15試合に登板し6勝6敗、防御率4.45という成績を残している。1イニングあたりに許した走者の数を表すWHIPは1.35で、防御率、WHIPともにMLB移籍以降、もっとも悪い成績となっている。
また、ゴロアウトとフライアウトの比率(※GO/AO)が0.88。昨季は1.46だったが、今季はフライを打たれやすくなっている。そのためか、被本塁打は17本とアメリカン・リーグで6番目に多い。投球回が95イニングという点から見ても、被本塁打数は多過ぎるだろう。
ただ、岩隈がチームに貢献していないわけではない。先発した15試合中、5イニング未満で降板したのは6月22日のデトロイト・タイガース戦(4回2/3)だけで、11試合は6イニング以上投げている。5月14日のロサンゼルス・エンゼルス戦から6月17日のボストン・レッドソックス戦まで7試合連続で6イニング以上を投げた。この間、マリナーズの先発陣で6イニング以上投げた選手はのべ18人だが、先発した全試合で6イニング以上投げたのは岩隈だけである。
悲願のプレーオフ進出に向けて岩隈の力は不可欠
マリナーズのチーム防御率はアメリカン・リーグ2位、30球団でも7位の3.87だ。しかしその内訳を見ていくと、リリーフ陣の防御率は30球団中7位の3.26と大健闘しているが、先発陣の防御率は同11位の4.21まで落ちる。そのため、リリーフ陣への負担が大きくなっていたのだが、6月2日にエースのフェリックス・ヘルナンデスが右ふくらはぎの痛みで6月2日に故障者リスト入りし、投手の台所事情が一層苦しくなった。
そんな状況下で、岩隈は勝ち星が伸びないうえに防御率も良くないものの、6イニング以上を投げて先発の役割は果たし、リリーフ陣の負担を軽くしてきたと見ることができる。
苦しい投手事情に追い打ちをかけるように6月24日のタイガース戦で先発予定だったエイドリアン・サンプソンがブルペンでの投球練習中に右ヒジを負傷。当面リリーフ投手をひとり増やすこととなり、その関係で青木宣親がメジャー5年目にして初めてマイナー降格となった。
シーズン前、マリナーズの上位進出を予想する声もあったが、現在のところ38勝38敗でアメリカン・リーグ西地区の3位だ。首位テキサス・レンジャーズとは11ゲームも離れている。地区優勝はかなり厳しくなったが……ワイルドカード争いでは2.5ゲーム差と十分射程圏内につけている。
全30球団で最もプレーオフから遠ざかっているマリナーズが、15年ぶりに進出を果たすためにも、岩隈には少しでも長いイニングを投げることが求められる。
(※)ゴロアウト/フライアウト比率(GO/AO )
ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。ゴロアウトとフライアウトが同じ 数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い投手となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)