地味で目立たないが…
ヤンキースの田中将大や、レンジャーズのダルビッシュ有ほど、存在感はなく、日本でのメディア露出も多くない。また、ヤンキースやレンジャーズは常に地区優勝を争う強豪だが、マリナーズは01年を最後に地区優勝から遠ざかっている球団だ。それでも、彼ら2投手以上に毎年コンスタントに好成績を収め、今季もすでに14勝した日本人投手が、シアトル・マリナーズの岩隈久志だ。
2012年に30歳を過ぎて、メジャー挑戦を決めた岩隈だったが、周囲の評価は冷ややかだった。“岩隈では勝てないだろう”や“誰でもメジャーで通用すると思ったら大間違い”など、そんな意見が大半だった。
【岩隈の年度別成績】
13年:33試 14勝6敗0S 防2.66
14年:28試 15勝9敗0S 防3.52
15年:20試 9勝5敗0S 防3.54
上記の年度別成績を見ると、良い意味で期待を裏切ったということがわかる。過去4年間で、積み上げた47勝と、貯金を毎年多く作っていることは立派。勝ち星は平均すれば、二ケタ勝っているわけで、故障で離脱することの多い田中やダルビッシュと比べても、遜色ないだろう。
今季は春先躓くも5月以降は白星を重ねる
岩隈は昨季オフ、ドジャースに移籍する方向で話がまとまっていたが、フィジカルチェック後に白紙となり、マリナーズに残留した。
今季もマリナーズのユニフォームを通すことになった岩隈は、4月こそ3連敗スタートとつまずいたが、5月に入ると復調。3日のアスレチックス戦で今季初勝利を挙げると、5月は4勝1敗と勝ち越し、6月も3勝2敗。7月も4勝1敗と好調をキープした。
8月に入るとさらにギアを上げ、ここまで3試合に登板して、3戦3勝だ。岩隈はここまで、24試合に登板して、14勝7敗、防御率3.84の成績を残している。
14勝の意味とは…
さて、この14勝の意味だが、今シーズンの岩隈を占う上でも、たいへん興味深い数字だ。まずは、14年にメジャー移籍後、シーズン自己最多の15勝に並ぶ。さらに、日本人メジャー投手のシーズン最多勝の更新にも期待が膨らむ。
これまでの日本人投手のメジャー最多勝は、松坂大輔(現ソフトバンク)がレッドソックス時代の08年に記録した18勝(3敗、防御率2.90)。岩隈が今シーズンをケガせずに乗り切れば、あと7、8試合の先発登板が見込める。そのなかで、5、6勝の上積みができれば、日本人投手の最多勝の更新はもちろん、20勝到達も夢ではない。さらに、岩隈が勝ちを積み上げることで、西地区2位と好調が続くマリナーズのプレーオフ進出も見えてくる。
チームは涼しい顔のイケメンエースが、メジャー日本人投手の最高峰に立とうとしている。