キーワードは『元ヤンキース』
現地時間10月2日(日本時間3日)、メジャーリーグのレギュラーシーズン全日程が終了。シーズン終了から1日の休養を挟むと、早くもワイルドカードゲームが始まる。ポストシーズンの幕開けだ。
一発勝負のワイルドカードゲームのあとは地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズ、そして最後がワールドシリーズ。これから約1カ月間に及ぶ戦いでメジャーの頂点を決する。
今年のポストシーズンをたのしむ上で、覚えておきたいキーワードがある。それが『元ヤンキース』だ。
ニューヨークを離れてプレーオフへ
カルロス・ベルトランは、トレード期限ぎりぎりの8月1日にヤンキースからレンジャーズへ移籍。8月17日から26日にかけて8試合連続無安打というスランプに陥った期間もあったが、それ以降は打率.333としっかり持ち直し、チームの地区優勝を支えた。
39歳のベテランは、これまでのポストシーズン通算52試合で16本塁打を放つなど、実績は申し分ない。カージナルス時代の2013年にはワールドシリーズにも出場しているが、その時はレッドソックスに2勝4敗で敗れ、世界一を逃した。
39歳のベルトランにとって、残されたチャンスはそれほど多くないはず。再びポストシーズンでの大暴れに期待したい。
また、セットアッパーとして勝利の方程式の一角を担っていたアンドリュー・ミラーは、7月31日にインディアンスへ移籍。貴重な左腕リリーバーとして、移籍後もフル回転でブルペンを支えた。
移籍後は26試合中8試合で4つ以上アウトを奪うなど、いわゆる“イニングまたぎ”も多くこなし、首脳陣からの信頼度は高い。チームは先発陣に故障者が続出しているだけに、ミラーに懸かる期待は大きい。
ちなみに、ポストシーズンはオリオールズ時代の14年とヤンキース時代の昨シーズンに経験済み。合計6試合に投げ、8回1/3を僅か1安打に抑えている。
そして最後、3人目はアロルディス・チャプマン。言わずと知れたメジャー最速左腕である。
7月25日にカブスへと移籍後すると、新天地でも豪速球を武器にセーブを量産。ぶっちぎり首位のチームで唯一不安視されていたブルペン陣を強化することに成功した。
ただし、カブス移籍後は防御率1.01と結果を残しているものの、8月16日のダブルヘッダーで1日2試合に登板した日を境に、9イニングあたりの四球数がそれまでの1.80から5.00まで跳ね上がるなど、制球面にはやや課題を残す。
チャプマンもレッズ時代の10年と12年に地区シリーズを経験。しかし、通算5試合でセーブもホールドも「0」(セーブ失敗が1度)。それもストッパーやセットアップとしてではなく、独特なプレッシャーがかかる場面で投げた経験はほぼ皆無と言っていい。
常時160キロを超える速球は簡単に攻略されることはないだろうが、ポストシーズンは一つの四球からガラッと試合の流れが変わってしまうことも多々ある。カブスの念願達成には、チャプマンの活躍は必要不可欠だ。
ほんの2か月前までチームメートだった3人。それが今では別々のチームで世界一をかけて戦うライバル関係にある。
果たして、『元ヤンキース』の3人の中からチャンピオンリングを手にする選手は現れるのだろうか。ポストシーズンは『元ヤンキース』の選手から目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)