ヤンキースの今オフ補強でイチローの立場はさらに厳しいものに…
渡米後10年連続で打率3割、200安打を達成するなどメジャー史上でも随一の安打製造機と認められているイチロー。その後2011年から打率は.272→.283→.262と推移し、今季も14日(現地時間)現在.283と3割到達は難しくなっている。今季は控え外野手として開幕を迎えたが、好調な打撃で徐々に先発機会を増やし、チームの全148試合中131試合に出場。しかし途中出場やスタメン時でも下位を打つことが多いため打席数は全盛期の半分程度だ。
今季ここまで放った安打は90本と、イチローにとって物足りない数字であり、チームもプレーオフが厳しい状況が続く。そんな中、注目はイチローの去就ということになる。
40歳のイチローにとって残り168本に迫ったメジャー通算3000安打と悲願のワールドシリーズ制覇が当面の目標になる。仮に来季ヤンキースに残留した場合、エルズベリーとガードナーというタイプが似た俊足巧打の左打者2人がいるため、チームは右の大砲を補強し、どこでも守れるイチローが再び控えに回る公算が大きい。そうなると3000安打到達は2016年以降になってしまうだろう。また、ジーターの引退、主力選手の高齢化やケガ、めぼしいプロスペクトの不在など、来季はさらにチームの弱体化が進むとみられる。
イチローが輝ける場所はシアトルと同じ西海岸にあり!
イチローが3000安打&世界一という2つを手に入れるには、ヤンキースを離れるべきだと考える識者の声は多い。しかし10月に41歳になるイチローをレギュラー待遇で迎えてくれる球団はそう多くはないだろう。しかも、その中で世界一を狙える球団となると限られる。そこで浮上するのは現在、ナ・リーグ西地区で首位ドジャースを3ゲーム差で追うジャイアンツだ。
主力選手は30歳前後の脂が乗った選手が多く、2010年と12年には世界一にも輝いている。外野はライトに右打ちのペンス、センターに両打ちのパガーンがいるが、2人は2014年以降も契約が残っていて不動のレギュラー扱いである。レフトには左打ちの俊足ブランコがいるが、今季で契約は切れる。成績を見てもイチローと似たタイプで、もしブランコがチームを去れば、イチローはうまい具合にフィットする。さらに40人ロースターに左打ちの外野手はブランコしかおらず、さらにジャイアンツの今季盗塁数はメジャーワースト2位と俊足選手の獲得は優先事項となるはず。
またイチローのチーム別の通算打率を見ると、ドジャース.350、パドレス.337、ロッキーズ.328、ダイヤモンドバックス.322とナ・リーグ西地区チームから高打率を残している。加えて、ジャイアンツの本拠地AT&Tパークは、イチローが2007年のオールスターでランニングホームランを打ちMVPを獲得した思い出の球場でもある。
ただし…ジャイアンツがイチロー獲得に動いたとしても、レギュラーが確約されるほど甘い契約というわけにはいかないだろう。それでも心機一転、ア・リーグを離れ、日系企業も多く進出しているベイエリアでプレーするイチローの姿も見てみたい気がする。そしてそれがもし実現すれば、1年後にメジャー通算3000安打と悲願の世界一を同時に手にしているイチローの姿も想像できてしまう。いずれにしても今オフ、イチローが下す決断に注目が集まるのは間違いない。