大胆な継投策がズバリ的中
敵地・広島で10年ぶり4度目の日本一に輝いた日本ハム。シリーズを通して失策やバッテリーミスなども目立ったが、それだけ緊張感の漂う中で行われた見応えあるシリーズだった。
広島が地元で2連勝スタートを切ったときには、札幌での日本一も現実味を帯びたように感じた。しかし、レギュラーシーズンで最大11.5ゲームの差を逆転した日本ハムの底力というのは、広島の想像以上だったに違いない。
今になって振り返ってみると、札幌での第5戦の結果がこのシリーズの行方を決めたといっても過言ではない。
お互いに2勝ずつを挙げ、勝った方が王手をかけるという大事な試合。広島はエースのジョンソン、日本ハムは新人の加藤貴之を先発マウンドに送り込んだ。
この2人の先発を見た時点で、広島有利と感じたファンも多かったはず。事実、ジョンソンは6回を無失点に抑え、加藤は結果的に1失点だったが、2回途中で降板した。
しかし、加藤の後を受けたメンドーサが5回2/3を無失点で切り抜けると、最終的には西川の満塁弾でサヨナラ勝ち。日本ハムがシリーズの流れを完全に手繰り寄せた。
4年前のデジャヴ
今年のシリーズの進み方というのは、実は栗山監督が就任1年目だった2012年の日本シリーズと途中まで全く同じだった。
原・巨人とのシリーズ。日本ハムは敵地・東京ドームで2連敗を喫するも、札幌での3戦目と4戦目に勝利し、タイの状況で5戦目へ。先発は巨人が内海哲也、日本ハムが吉川光夫という当時のエース対決だった。
ところが、吉川は2回に2点を失うと、3回にも犠打と犠飛を挟んで4本の長短打を浴び、5失点でノックアウト。日本ハムはその試合を2-10で落としてしまうと、東京ドームでの第6戦にも敗れて日本一を逃した。
この時、栗山監督は重大なミスを犯した。先発がその年14勝を挙げて最優秀防御率投手にも輝いた吉川だったことも大きいが、継投が遅れたことにより、取り返しがつかないことになってしまったのだ。
失敗から学べ
そんな4年前と同じ状況で迎えた今年の第5戦。指揮官は同じ過ちを繰り返すことはなかった。
この大胆な継投策の中できっちり結果を出したメンドーサも素晴らしかったが、メンドーサの好投というのは栗山監督にとって“想定通り”だったのではないだろうか。
メンドーサは今季レギュラーシーズンで23試合に登板し、そのうち22試合が先発であった。
しかし、唯一のリリーフ登板だった9月7日のロッテ戦では、1点リードの3回からマウンドに登ると、5イニングを無失点で切り抜けている。栗山監督はメンドーサのロングリリーフをしっかりテストしていたのだ。
また、敗れた第2戦でも1イニングを無失点に抑えており、シリーズの雰囲気を前もって経験させておいたという点も大きかっただろう。こうしたことの積み重ねが重要な第5戦の勝利を呼び込み、10年ぶりの日本一を手繰り寄せたのだった。
4年前の苦い経験を見事に生かした栗山監督。一方の緒方孝市監督は、このシリーズでは疑問の残る采配も見られた。
しかし、まだ監督になってこれが2年目。大事なのは栗山監督のように失敗から学び、それを次に生かせるかどうか...。すべては緒方監督次第だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)