川崎宗則の2016年
米球界で過ごす5年目のシーズンを終えた川崎宗則。日米球界が誇るエンターテイナーは来季どこでプレーするのか...。このオフの動向が注目される選手の一人である。
国内復帰ならば古巣・ソフトバンクが濃厚だと言われているが、果たしてサプライズはあるのだろうか。
カブスの一員として2016年シーズンを迎えた川崎は、その大半をマイナーで過ごした。
メジャーでは5年間で自己最少となる14試合・21打席に終わったが、限られたプレー機会の中で打率.333(21打数7安打)、2盗塁をマーク。ポストシーズンではムードメーカーとしてベンチを盛り上げ、球団108年ぶりの世界一という歴史的瞬間を見届けている。
メジャーレベルの守備力は健在
しかし、そんな川崎もすでに35歳。米国に残る道を選択したとしても、メジャー契約は難しいだろう。それでも、内野のユーティリティープレーヤーとしての価値は計り知れないものがある。
今季はカブス傘下の3A・アイオワを主戦場とし、マイナー自己最多の102試合に出場。主に遊撃手を務めた。
守備範囲の広さを示す指標・レンジファクター(Range Factor=守備機会をイニング数で割って9倍にした数値)を見てみると、「3.73」という数字がはじき出される。つまり、遊撃手として9イニングあたり平均4回近いアウトに関与したということだ。
この「3.73」という数字自体は特筆すべきものではないのだが、カブスの正遊撃手アディソン・ラッセルがマークしたレンジファクター(RF)は「3.65」。今季守備でチームに貢献したといわれるラッセルのRFを、川崎は上回っていたのだ。
守備率を見てもそう。川崎が.982をマークしたのに対し、ラッセルは.975。堅実さでも決して負けていない。もちろん、メジャーとマイナーという全く別の舞台の数字であるため、単純に比較はできないのだが、川崎の守備力はもっと評価されても良いだろう。こと守備に関しては、来季も十分メジャーで通用するはずだ。
チームに好影響をもたらす男
一方で、川崎のウィークポイントはやはりバッティングになる。
メジャー通算の成績は、276試合で打率.237(633-150)。本塁打は1本で、51打点の12盗塁という数字だ。日本時代に見せていたイケイケのリードオフマンとしての輝きは影を潜めている。
ただし、マイナーでは今季も打率こそ.255と伸びなかったものの、出塁率は.352を記録。盗塁も20個を数えた。持ち前のスピードは健在である。
遊撃だけでなく二塁や三塁も守れるユーティリティー性に、堅実な守備力を兼ね備えた男。加えて衰えを知らない脚力も持ち、メジャーレベルでも多くのチームの助けになるはず。何よりその明るいパーソナリティーを放っておく手はないだろう。
本人がこのオフにどのような決断を下そうとも、川崎が所属するチームに様々な好影響をもたらしてくれる存在であることは間違いない。
▼ 川崎宗則
生年月日:1981年6月3日(35歳)
身長/体重:180センチ/79キロ
投打:右投左打
ポジション:内野手
経歴:鹿児島工業高-ダイエー・ソフトバンク(99年D4)-マリナーズ-ブルージェイズ-カブス
[今季成績] 14試 率.333(21-7) 本0 点1
[通算成績] 276試合 率.237(633-150) 本1 点51
文=八木遊(やぎ・ゆう)