上原浩治の2016年
三浦大輔や黒田博樹ら、今年も大物の引退が相次いだプロ野球。40歳以上の投手が続々と引退を決意していく中、メジャーリーグでは41歳の上原浩治が来季も現役を続行する。
レッドソックスで4年目を迎えた上原。今シーズンはメジャー屈指のクローザーであるクレイグ・キンブレルの加入もあり、セットアッパーとして開幕を迎えた。
しかし、防御率はリリーフに回った2010年以降で初の3点台(3.45)を記録。苦しい出だしとなったが、それでもシーズン折り返しの7月9日以降はポストシーズンも含めて17試合(16回1/3)連続で無失点の好投。チームの地区優勝に大きく貢献した。
現在はフリーエージェント(FA)となり、新たな活躍の場を探している。
光った熟練の投球術
40歳を過ぎ、ストレートの球速は年々下がっている。
ストレートの平均球速を見てみると、2013年の89.2マイル(143.5キロ)がピーク。その後は88.2マイル(141.9キロ)、87.1マイル(140.1キロ)、そして16年は86.7マイル(139.5キロ)と、4年間で2.5マイル(4キロ)も落ちているのだ。
しかし、ストレートが遅くなっているにもかかわらず、今シーズンの奪三振率(=9イニングあたりの奪三振数)は、2013年の12.23に次ぐ12.06をマーク。自身2番目に良い数字を残した。
守護神やセットアッパーを務める投手といえば、ほとんどが当たり前のように150キロ超えのストレートを投げ込む剛腕揃いという中で、平均140キロにも満たなかった上原がこれだけ三振を奪えたのは、制球力とベテランならではの投球術があったからだろう。
年齢も球速もウィークポイントにしない
球質が決して重くない上原にとって、ボールゾーンぎりぎりでの勝負は避けて通れない。特にストレートを高めに、スプリッターを低めに投げ分け、高低で勝負する投球スタイルは日本時代から一貫している。
ただし、いずれもストライクゾーンに入ってしまえば痛打される確率が増える。リスクもはらむ中、打者が手を出して来そうなぎりぎりのコースに投げることこそ、上原の生命線になっている。
そこでストレートとスプリッターのデータを見てみると、今シーズンは前年と比べてそれぞれボールゾーンへの投球率が増加していたことがわかる。
ストレートの「高めボールゾーン」への投球率は、昨年の20.2%から27.2%にアップ。スプリッターの「低めボールゾーン」への投球率も、35.9%から38.9%へと上昇している。
ボールゾーンへの投球率増加というと、四球の増加にもつながりそうなところだが、与四球率(=9イニングあたりの四球数)は2.01から2.11と僅かに増えただけ。ストレートは高め、スプリッターは低めのボールゾーンに制球する高低差を活用することで、並み居る強打者を封じていたのだった。
ストレートが遅くても、最大の武器である精密なコントロールと投球術が健在な限りメジャーで戦える。それは本人も見る側も共通の想いであろう。来季もアメリカのマウンドで躍動する姿が見られることに期待したい。
▼ 上原浩治
生年月日:1975年4月3日(41歳)
身長/体重:187センチ/88キロ
投打:右投右打
ポジション:投手
経歴:東海大仰星高-大阪体育大-巨人(98年D1)-オリオールズ-レンジャーズ-レッドソックス
[今季成績] 50試 2勝3敗7セーブ 奪三振63 防御率3.45
[通算成績] 387試 19勝22敗93セーブ 奪三振522 防御率2.53
文=八木遊(やぎ・ゆう)