コラム 2016.12.02. 18:00

データで振り返る!メジャー日本人選手の2016年 ~岩隈久志 編~

無断転載禁止
今年は16勝を挙げた岩隈

岩隈久志の2016年


 メジャー5年目を終えたマリナーズの岩隈久志。今季は自己最多の16勝を挙げ、フェリックス・ヘルナンデスとのダブルエースを形成している。

 勝利数が伸びたのは、味方打線の援護が大きな要因だった。先発登板時の援護点(ランサポート=9イニングあたりの味方打線が挙げた得点)は、規定投球回数に達した74投手中14位の5.06。これだけ援護に恵まれれば、16勝という数字も納得だ。

 勝利数は自己最多を更新した一方で、防御率は初めて4点台(4.12)まで落ち込んだ。防御率悪化の要因となったのは、被本塁打の多さだろう。

 例年その数は決して少なくないが、今季は自己ワーストとなる28本もの本塁打を献上。ほぼ1試合に1本打たれていた計算になるが、内訳を見るとソロが22本、2ランが6本、3ランと満塁弾は1本もなかった。2人以上走者を背負った場面では一度も本塁打を許さなかった。


増加した被本塁打の要因


 被本塁打数の増加は、フライの比率が増加したことが要因に挙げられる。

 フライ1本当たりのゴロの数を表すGB/FB(ゴロ/フライ)は、メジャー1年目の1.91から1.45、1.75、1.62とほぼ横ばいで推移していた。しかし今季は、これが1.08まで急降下。ゴロとフライがほぼ同じ数字なるレベルにまでゴロが減った(フライが増えた)のだ。

 スプリッターに加え、スライダーやツーシームといった横の変化球を多投する岩隈にとって、ゴロの比率が減ることは死活問題。来季は少なくとも1.50レベルに引き上げたいところだろう。


苦しんだ中でも光った“ある力”

Seattle Mariners v Houston Astros

 また、ベテランならではの“マウンドさばき”も岩隈の活躍を測る指標となっている。

 2014年から2015年の2年間、岩隈が許した盗塁数はわずかに1つだけ(盗塁刺は8)であったが、今年は1年で8個もの盗塁を許した(盗塁刺は4個)。

 これには捕手の力も関わってくるため、一概に岩隈だけの責任とは言えないが、昨年までの2年間は走者を塁上にくぎ付けにしていた男がこれだけ走られてしまったのは、マウンドでのリズムが悪かった証しであろう。

 それでも、岩隈が許した盗塁の内訳を期間別で見ると、8つの盗塁のうち7つは5月7日のアストロズ戦までに許したものだった。それも、そのアストロズ戦では1イニングに3つの盗塁を許すなど、岩隈らしくないマウンドさばきが目立っていた。

 しかし、こういった試合を受けて微修正を図り、それを活かすことができるのはベテランならではの力。次の試合以降の残り26試合で許した盗塁は1つだけ。“修正力”を見せつけている。

 メジャー6年目を迎える来季、岩隈は36歳になる。培ってきた投球術で、チームを2001年以来のポストシーズンに導けるだろうか。


▼ 岩隈久志

生年月日:1981年4月12日(35歳)
身長/体重:190センチ/95キロ
投打:右投右打
ポジション:投手
経歴:堀越高-近鉄(99年D5)-楽天-マリナーズ
[今季成績] 33試 16勝12敗 奪三振147 防御率4.12
[通算成績] 144試 63勝37敗2セーブ 奪三振698 防御率3.39


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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