ダルビッシュ有の2016年
トミー・ジョン手術から見事な復活を果たし、17試合の登板で7勝を挙げたダルビッシュ有。復帰後は左腕コール・ハメルズとともにチームをア・リーグ西地区優勝に導いた。
5月28日に1年9カ月ぶりの復活登板を果たすも、3試合に投げただけで右肩と首に違和感を発症。再復帰まで1カ月以上を要した。それでも、再復帰2戦目の7月22日から8月29日まで8試合連続でクオリティースタート(=QS/6イニング以上を投げて自責点3以下)を記録するなど安定した投球を続けた。
与四球の数がカギ
球速アップと同時に、課題であった制球力の改善にも成功した。今年の四球率は2.78で、渡米後では自身初めてシーズン3.00を下回っている。これは来季に向けて非常に良い材料と言えるだろう。というのも、ダルビッシュの与四球の数と試合の勝敗は直結しているからだ。
今季登板した17試合を“与四球の数”で分けて見てみよう。「3以上」と「2以下」で見ると、「3以上」は5試合あって0勝3敗、防御率6.66。制球難から崩れるというもろさを露呈している。
その一方で、与四球を「2以下」に抑えた試合は12試合で7勝2敗。防御率も2.46とエース級の成績を残したのだ。
ちなみに故障前の通算でも、「3以上」の時は41試合で18勝16敗、防御率4.38。「2以下」だと42試合で21勝9敗、防御率は2.29。四球を最小限に抑えることこそ、さらなる成績アップのカギとなるのだ。
走者を背負っても強かった
与四球数が減少すれば、走者を背負った場面での投球機会も必然的に減少する。ただし、今季のダルビッシュは、その「走者あり」の状況で素晴らしい成績を残している。
メジャー1年目から故障した14年まで、「走者あり」時の被打率は順に.238→.201→.216と大きく変わらないが、どれもリーグ平均よりもいい数字だった。しかし、復帰初年度の今季はこの数字を.162までさらに改善させたのだ。
今季は「走者あり」の状況で179人の打者と対戦。この条件を上回る投手はメジャー全体で142人いたが、被打率を1割台に抑えたのはダルビッシュを含め6人だけ。2位のブラッド・ハンド(パドレス)は.176だが、3位から6位の4人はいずれも1割9分台だった。ダルビッシュの数字がいかに圧倒的だったか、お分かりいただけるだろう。
現在は豪華メンバーで行っている自主トレを自身のinstagramで公開し、話題を集めている右腕。復帰2年目となる2017年は、さらなる飛躍を遂げることができるだろうか。
そして来季こそ、ポストシーズンでの活躍にも期待したい。
▼ ダルビッシュ有
生年月日:1986年8月16日(30歳)
身長/体重:195センチ/99キロ
投打:右投右打
ポジション:投手
経歴:東北高-日本ハム(04年D1)-レンジャーズ
[今季成績] 17試 7勝5敗 奪三振132 防御率3.41
[通算成績] 100試 46勝30敗 奪三振812 防御率3.29
文=八木遊(やぎ・ゆう)