今年の新人王が決定
11月20日、都内でプロ野球2017年シーズンの総決算「NPB AWARDS 2017 supported by リポビタンD」が開催され、今年のプロ野球界を盛り上げた選手たちが表彰を受けた。
注目を集めた新人王は、パ・リーグが西武の源田壮亮、セ・リーグは中日の京田陽太に決定。プロ1年目の野手が揃って受賞するのは36年ぶりのことであり、遊撃手のW受賞は史上初の快挙となった。
中でも注目を集めていたのが、セ・リーグの新人王争いだ。開幕から突っ走った京田に対し、終盤戦でDeNAの左腕・浜口遥大が猛追。最終盤で2ケタ・10勝を達成し、ポストシーズンで大活躍を見せたことから、印象度的な面も含めて浜口を推すファンの声が徐々に大きくなっていった。
ただし、新人王の記者投票はポストシーズンの頃にはすでに締め切られているため、浜口は京田と大山悠輔(阪神)に次ぐ3位の得票数に。それでも、1年目から10勝を挙げた活躍が認められ、セ・リーグ連盟特別表彰という形で「新人特別賞」が贈られた。
こうした新人への特別表彰は過去にも存在しており、リーグ内に新人王に値する活躍をした選手が複数名いた場合、記者投票で新人王に選出されなかった選手はリーグから表彰を受けることがあるのだ。今回は新人王以外に「特別表彰」が贈られた年を振り返ってみた。
1987年:ライバルとして火花を散らす2人
<新人王>阿波野秀幸(近鉄)
1年目・23歳
[成績] 32試(249.2回) 15勝12敗 201奪三振 防御率2.88
[通算] 305試(1260回) 75勝68敗5セーブ 985奪三振 防御率3.71
<パ・リーグ会長特別賞>
西崎幸広(日本ハム)
1年目・23歳
[成績] 30試(221.1回) 15勝7敗 176奪三振 防御率2.89
[通算] 330試(2004回) 127勝102敗22セーブ 1573奪三振 防御率3.25
亜細亜大卒ルーキーの阿波野と愛知工業大卒ルーキーの西崎による一騎打ちとなったこの年。なお、阿波野が3球団競合の末にプロ入りしたのに対し、西崎は近藤真一(中日入団)のハズレ1位であった。
勝数で並び、防御率もほぼ同じ。阿波野は負け数が西崎より5つ多かったものの、両リーグ最多の201奪三振と249回2/3を投げたことが決定打となり、記者投票は阿波野に軍配。しかし、ほかの年であれば新人王間違い無しの成績を残した西崎の活躍ぶりも捨てがたく、リーグから特別賞が贈られることになった。
1990年:トルネード旋風とその影で…
<新人王>野茂英雄(近鉄)
1年目・22歳
[成績] 29試(235回) 18勝8敗 287奪三振 防御率2.91
[通算] 139試(1051.1回) 78勝46敗 1204奪三振 防御率3.15(※NPB通算5年)
<優秀新人賞>
潮崎哲也(西武)
1年目・22歳
[成績] 43試(102.2回) 7勝4敗8セーブ 123奪三振 防御率1.84
[通算] 523試(1249.1回) 82勝55敗55セーブ 967奪三振 防御率3.16
石井浩郎(近鉄)
1年目・26歳
[成績] 86試 率.300(263-79) 本22 点46
[通算] 974試 率.289(3091-894) 本162 点536
酒井光次郎(日本ハム)
1年目・22歳
[成績] 27試(171.2回) 10勝10敗 103奪三振 防御率3.46
[通算] 171試(553.1回) 23勝36敗 380奪三振 防御率4.07
8球団競合ルーキー・野茂英雄が最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手四冠を独占。シーズンMVPに沢村賞、ベストナインにも輝き、新人王も文句なしでの受賞となる。
ところが、野茂が異次元の成績を残したその影で、1年目からセットアッパーに定着して好成績を残した潮崎、規定未到達ながら22本塁打を記録した石井、そして2ケタ勝利を達成した酒井の3名の奮闘ぶりが表彰に値する成績だったことが考慮され、3名全員に特別賞が贈られた。
1992年:ライバルを抑えて…
<新人王>高村 祐(近鉄)
1年目・23歳
[成績] 28試(180回) 13勝9敗 153奪三振 防御率3.15
[通算] 287試(1476.2回) 83勝102敗 1094奪三振 防御率4.31
<優秀新人賞>
若田部健一(ダイエー)
1年目・23歳
[成績] 27試(193.1回) 10勝13敗 97奪三振 防御率4.00
[通算] 271試(1315回) 71勝75敗 761奪三振 防御率4.15
片岡篤史(日本ハム)
1年目・23歳
[成績] 125試 率.290(431-125) 本10 点53
[通算] 1569試 率.270(5272-1425) 本164 点717
河本育之(ロッテ)
1年目・25歳
[成績] 40試(76.2回) 2勝4敗19セーブ 91奪三振 防御率2.58
[通算] 500試(637.2回) 36勝43敗95セーブ 634奪三振 防御率3.57
法政大からドラフト1位で近鉄に入団した高村が13勝を挙げて新人王に選出。大学時代からのライバルであり、4球団競合でダイエー入りした若田部を抑えてのタイトルだった。
しかし、若田部もその評判に違わぬ活躍で1年目からローテーションに定着。10勝を挙げたことが評価され、特別表彰が贈られた。また、ドラフト2位指名から一軍に定着した片岡と河本にも同じく特別表彰が贈られている。
1998年:四つ巴の大激戦
<新人王>川上憲伸(中日)
1年目・23歳
[成績] 26試(161.1回) 14勝6敗 124奪三振 防御率2.57
[通算] 275試(1731回) 117勝76敗1セーブ 1381奪三振 防御率3.24(※NPB通算)
<セントラル・リーグ会長特別表彰>
高橋由伸(巨人)
1年目・23歳
[成績] 126試 率.300(466-140) 本19 点75
[通算] 1819試 率.291(6028-1753) 本321 点986
坪井智哉(阪神)
1年目・24歳
[成績] 123試 率.327(413-135) 本2 点21
[通算] 1036試 率.292(3348-976) 本32 点265
小林幹英(広島)
1年目・24歳
[成績] 54試(81.2回) 9勝6敗18セーブ 105奪三振 防御率2.87
[通算] 238試(337回) 19勝22敗29セーブ 356奪三振 防御率3.90
東京六大学時代からライバル関係にあった川上と高橋がともに即戦力として活躍を見せたなか、新人王争いは14勝を挙げた川上に軍配。高橋を直接対決で22打数1安打(1本は本塁打)に封じた内容も光った。
また、大卒2人がハイレベルな争いを繰り広げる中、社会人からプロ入りして新人王級の成績を残した坪井と小林にも特別表彰の贈呈が決定。新人に対しての特別表彰はセ・リーグ史上初のことであった。
1999年:怪物フィーバー
<新人王>松坂大輔(西武)
1年目・19歳
[成績] 25試(180回) 16勝5敗 151奪三振 防御率2.60
[通算] 205試(1403.2回) 108勝60敗 1357奪三振 防御率2.96
<優秀新人賞>
川越英隆(オリックス)
1年目・26歳
[成績] 26試(177回) 11勝8敗 134奪三振 防御率2.85
[通算] 298試(1215.1回) 54勝76敗 767奪三振 防御率4.10
1年目から最多勝に輝くなど、プロの世界でも怪物フィーバーを巻き起こした松坂が文句なしの新人王。しかし、1年目からローテーションに入って11勝を挙げ、エース級の安定感でチームを支えた川越を評価する声も多く、リーグから特別表彰が贈られた。
2007年:伝説の幕開け
<新人王>田中将大(楽天)
1年目・19歳
[成績] 28試(186.1回) 11勝7敗 196奪三振 防御率3.82
[通算] 175試(1315回) 99勝35敗 1238奪三振 防御率2.30(※NPB通算)
<優秀新人賞>
岸 孝之(西武)
1年目・23歳
[成績] 24試(156.1回) 11勝7敗 142奪三振 防御率3.40
[通算] 252試(1697.1回) 111勝75敗1セーブ 1432奪三振 防御率3.02
高卒ルーキー・田中と大卒ルーキー・岸が同じ11勝7敗で並ぶも、奪三振と投球回数で上回った田中が新人王を受賞。次点ながら優秀な成績を残した岸は特別表彰を受賞した。
2008年:育成史上初の新人王誕生
<新人王>山口鉄也(巨人)
3年目・25歳
[成績] 67試(73.2回) 11勝2敗2セーブ・23ホールド 69奪三振 防御率2.32
[通算] 642試(639.2回) 52勝27敗29セーブ・273ホールド 509奪三振 防御率2.34
<新人選手特別賞>
坂本勇人(巨人)
2年目・20歳
[成績] 144試 率.257(521-134) 本8 点43
[通算] 1418試 率.286(5444-1559) 本165 点639
ともにデビュー翌年、新人王有資格者として挑んだシーズンに開花。育成から這い上がり、中継ぎで11勝を挙げた山口が育成出身者として初の新人王に輝き、2年目にして全試合出場を果たした坂本には特別表彰が贈られた。
2011年:先発から抑えまでフル回転
<新人王>牧田和久(西武)
1年目・27歳
[成績] 55試(127.2回) 5勝7敗22セーブ・1ホールド 86奪三振 防御率2.61
[通算] 276試(921.1回) 53勝49敗25セーブ・54ホールド 514奪三振 防御率2.83
<優秀新人賞>
塩見貴洋(楽天)
1年目・23歳
[成績] 24試(154.2回) 9勝9敗 113奪三振 防御率2.85
[通算] 112試(663.1回) 37勝44敗 477奪三振 防御率3.72
シーズン当初は先発からスタートし、最後は抑えに定着した牧田が新人王を受賞。先発として1年目からローテーションに定着し、規定投球回をクリアして9勝、防御率2.85の好成績を残した塩見に特別表彰が贈られた。
2012年:新人最多登板&ホールド記録を樹立
<新人王>益田直也(ロッテ)
1年目・23歳
[成績] 72試(75.1回) 2勝2敗1セーブ・41ホールド 57奪三振 防御率1.67
[通算] 342試(335.2回) 17勝19敗58セーブ・111ホールド 287奪三振 防御率3.11
<優秀新人賞>
武田翔太(ソフトバンク)
1年目・19歳
[成績] 11試(67回) 8勝1敗 67奪三振 防御率1.07
[通算] 100試(622回) 48勝26敗 533奪三振 防御率2.89
開幕一軍入りからリリーフ陣の一角に定着し、新人シーズン最多記録となる72登板・41ホールドを達成した益田が新人王を受賞。7月7日のデビューから11試合で8勝を挙げた高卒ルーキー・武田は新人王こそ届かなかったものの、特別表彰を受賞している。
2013年:2ケタ勝利が3人も
<新人王>小川泰弘(ヤクルト)
1年目・23歳
[成績] 26試(178回) 16勝4敗 135奪三振 防御率2.93
[通算] 117試(736.1回) 52勝34敗1ホールド 594奪三振 防御率3.40
<新人特別賞>
菅野智之(巨人)
1年目・24歳
[成績] 27試(176回) 13勝6敗 155奪三振 防御率3.12
[通算] 126試(884.1回) 61勝33敗 763奪三振 防御率2.18
藤浪晋太郎(阪神)
1年目・19歳
[成績] 24試(137.2回) 10勝6敗 126奪三振 防御率2.75
[通算] 114試(727.2回) 45勝37敗 736奪三振 防御率3.05
この年はセ・リーグで3名の投手が2ケタ勝利を挙げたが、16勝をマークして最多勝のタイトルを獲得した小川が新人王に。13勝を挙げた菅野と、高卒ながら10勝を挙げた藤浪に特別表彰が贈られた。
2017年:球団19年ぶりの…
<新人王>京田陽太(中日)
1年目・23歳
[成績] 141試 率.264(564-149) 本4 点36
<新人特別賞>
浜口遥大(DeNA)
1年目・23歳
[成績] 22試〈123.2回〉 10勝6敗 136奪三振 防御率3.57