確実に進めるのが吉か、強行に賭けるのが吉か
クリーンヒットや本塁打、豪快なスイングに興奮するファンがいる一方で、最近の野球は何かが変わってきたと思うファンも多いのではないだろうか。
地味だが、確実に走者を次の塁へ進める技術…。そう、犠打。バントが少なくなってきていると嘆くファンの声をよく聞く。昨季のセ・パ両リーグの犠打ベスト5と、通算犠打のベスト5は以下の通り。
<セ・リーグ>
2位 36個 片岡治大(巨人)
3位 29個 上本博紀(阪神)
4位 28個 大和(阪神)
5位 27個 亀澤恭平(中日)
<パ・リーグ>
1位 35個 今宮健太(ソフトバンク)
2位 34個 中島卓也(日本ハム)
3位 29個 安達了一(オリックス)
4位 24個 鈴木大地(ロッテ)
5位 22個 炭谷銀仁朗(西武)、田村龍弘(ロッテ)
<通算犠打数ベスト5>
1位 533個 川相昌弘
2位 451個 平野 謙
3位 408個 宮本慎也
4位 305個 伊東 勤
5位 300個 新井宏昌
こうして見るとお分かりの通り、ベスト5の中に現役選手は一人もいない。
川相の533個は世界記録としてギネスにも載っている大記録。1991年には当時のシーズン記録となる66犠打(※2001年に宮本が67犠打で塗り替えた)をマークし、95年には47犠打で失敗0という大記録も達成している。
川相に代表されるように、各チームの2番打者といえば“バントの名人”が多かった。
通算ベスト5の選手のうち、伊東を除いた選手は主に2番打者。1番打者が塁に出て、2番が送りバント。クリーンナップが返すという得点パターンが確立されていた。
だが、現代野球ではどうだろうか。ある野球指導者がこんな話をしてくれた。
「2番打者が簡単に送りバントして、アウトを1個献上するぐらいなら、強行策で勝負するのも手。むしろ、ヒットエンドランの方がいい。2番打者には、確実にゴロを打てる技術があった方がいいのではないかな」。
なるほど、これも一つの考え方なのかもしれない。さらに言えば、2番打者にも強打者や長距離打者を起用するチームというのも少なくない。
特にメジャーでは「上位打者は、打てないと困る。打線の中でもっとも打順が回る回数が多いのだからね」と、実に合理的な考えを持つ指導者が多いのだ。
バントを取るか、強行策を取るか…。そこに明確な答えがあるとは思えない。ただ一つ言えるのは、野球は点取りゲームだということ。走者がホームに還らなければ何の意味もない。そこは不変だ。
「無死走者一塁」――。球場やテレビ観戦中にこの場面に出くわした時、そのチームはどのようにして点を取りに行くのか。是非とも注目して動きを見ていただきたい。