キャリアで一度きりのタイトル「新人王」
今年は近年稀に見る「新人当たり年」と言われ、開幕前からたのしみなルーキーが多かったプロ野球。早くも気になる“新人王争い”が激化している。
まずはじめに紹介しておきたいのが、新人王には「資格」が存在するということ。“新人王”と言ったら入団1年目のルーキーでなければ獲れないものと思いがちだが、実はそうではない。新人王には「資格」という規定があるのだ。
【新人王の資格】
・初めて支配下登録を受けてから5年以内の選手
・前年までの出場が・・・30イニング以内(投手)/60打席以内(野手)
上記を満たしていれば、“ルーキー”として新人王レースに参加することができる。そのため、意外な“大穴”候補が潜んでいることも少なくないのだ。
近年は特に少ない野手の新人王、今年は…
まずは野手から見ていこう。基本的に即戦力で活躍するルーキーというと投手に多く、野手の新人王となるとセ・リーグは2010年の長野久義(巨人)、パ・リーグではなんと1998年の小関竜也(西武)が最後。厳しい現状がお分かりいただけるだろう。
今シーズンのセ・リーグでは、開幕から1番打者として活躍を見せた高山俊が存在感を発揮。2001年の赤星憲広以来となる球団野手の新人王獲得に期待が高まったが、ここに来て打率.252、本塁打は2本と数字を落としている。
肘の不安などから調子を崩し、今やレギュラーとは呼べない状態に。この壁を乗り越え、1番の地位を不動のものとした時、タイトルはすぐそばまで来ていることだろう。
ほかにも定位置を確保している1年目の野手というと、DeNAの捕手・戸柱恭孝も候補に入ってくる。
ここまで40試合に出場し、打率.234、1本塁打。それでも守備面での評価が高く、1年目ながら投手陣からの評判も厚い。当初はベンチから配球のサインを決めるという作戦を示唆していたラミレス監督も、今やほとんどを戸柱に託しているというから、首脳陣からの信頼も掴んだといえるだろう。
打撃での数字がもう少し上がり、チームを上位へと導くことができれば、タイトルの有力候補へと躍り出る可能性を秘めている選手だ。
一方、17年間も野手が新人王から遠ざかっているパ・リーグでは、楽天の茂木栄五郎が良い活躍を見せている。
ここまで40試合の出場で打率.276、1本塁打。開幕から低迷する時期が続いたが、5月10日から15日までの4試合で17打数10安打の大爆発。プロ初本塁打も記録し、ようやく本来の打撃を発揮しつつある。
閉ざされた扉を開くことができるか…。17年ぶりの野手による快挙へ、茂木の今後の活躍ぶりは注意して見ていきたいポイントになる。
投手の本命は…
続いて新人王レースを牽引する投手はどうか。
セ・リーグの注目は、大学時代からライバル関係にあるDeNAの今永昇太とヤクルトの原樹理だ。
今永はここまで2勝4敗と黒星が先行しているものの、その投球内容はルーキーたちの中でも別格。防御率1.96はリーグ4位の数字で、奪三振56はリーグ3位。新人王だけでなくいきなりの主要タイトル獲得も射程圏に捉えている。
実際に打線の援護が増えてきたここ2戦は連勝。このまま一気に新人王へと駆け上がっていく可能性を秘めた“本命”であると言えるだろう。
ヤクルトの原樹理も、1年目の開幕からチャンピオンチームのローテーションの一角を確保。2勝3敗で防御率3.94という成績となっているが、こちらも援護に恵まれず泣いたケースが多かった。
チームも5位と低迷しているだけに苦しい戦いは続くが、なんといっても打線の破壊力はリーグ屈指。援護を手にした時、一気に連戦連勝で成績を伸ばしていくことも十分に考えられるだろう。
ほかにも広島の岡田明、横山弘樹のドラフト1位・2位コンビや、阪神の2年目左腕・横山雄哉など、注目候補は多数。熾烈な争いに期待が高まる。
一方のパ・リーグは、新人でローテ入りを果たしている投手がいないという状況。そんな中、ロッテの3年目右腕・二木康太がアピールを見せている。
今年は開幕からローテの一角に食い込み、4月12日の楽天戦で1失点完投勝利を挙げるなど、ブレイクの兆しを見せた。
ここに来て負けが込み、2勝5敗で防御率4.37と数字を悪くしているが、昨年の新人王・有原航平(日本ハム)が8勝6敗、防御率4.79という成績だったことを考えると、今後の投球次第で十分に巻き返すことが可能だ。
キャリアで一度しか獲得のチャンスがない、特別なタイトル。最後まで誰が獲るのか分からないような熾烈な争いに期待したい。