今オフの目玉となるか
シーズンの終わりが近づくにつれて、徐々にストーブリーグの動向も気になる時期になってきた。
まず大きく取り上げられたのが、オリックスの糸井嘉男。国内FA権を取得した35歳は、「オフになってから」と行使についての明言は避けているものの、チームのCS進出が完全消滅したこのタイミングで「権利行使を検討中」という報道が噴出した。
すでに巨人、阪神といったところが獲得候補として挙がるなど、行使となれば争奪戦は必至。来年36歳を迎えるとはいえ、今シーズンはここまでキャリアハイの51盗塁をマークするなど、その肉体は限界を知らない。
投手としてはじまったキャリア
元はといえば投手としてプロの世界へと飛び込んできた糸井。2003年の自由枠で日本ハムに入団した。
最速153キロ右腕として大きな期待を受けたものの、ファームでは2年間通算で8勝止まり。課題の制球難を最後まで克服できず、一軍昇格を掴むことはできなかった。
そんな糸井に転機が訪れたのは、プロ3年目の2006年のこと。4月に野手へ転向すると、同年9月にはリーグ最多の23安打を放ち、月間打率もリーグトップの.397をマーク。野手転向から5カ月でタイトルを獲得し、その年は規定には満たなかったものの打率.303、8本塁打、27打点を記録した。
2008年にはプロ初本塁打を放つなど、一軍で63試合に出場。翌2009年は131試合の出場で打率.306、15本塁打とブレイクを果たす。
そこからは4年連続で打率3割をクリアするなど、リーグ屈指の外野手へと成長。チームの顔として人気も不動のものとなった頃、衝撃的な知らせが飛び込んでくる。オリックスへのトレード移籍だ。
まさかのトレード移籍
まさに青天の霹靂――。キャンプを一週間後に控えた2013年の1月25日、トレードの成立が発表。日本ハムは木佐貫洋、大引啓次、赤田将吾の3名を獲得し、代わりに八木智哉と糸井をオリックスへ放出した。
糸井のメジャー移籍願望が強かったことや、ちょうどその頃契約交渉がもつれていたこともあって様々な憶測が飛び交ったが、その真相は明かされていない。ただただ球界に衝撃が走った。
それでも、今では「オリックス・糸井」が違和感なく浸透している。移籍初年度は141試合の出場で打率.300。日本ハム時代から続いた連続3割をなんとか死守すると、2014年には打率.331で首位打者のタイトルも獲得。新天地でも躍動し、2015年からはチームの主将に任命された。
ところが、その年は度重なる故障に苦しめられて打率.262と低迷。プロ入り後初めてとなる規定到達での2割台に終わり、連続3割の記録も途切れてしまう。
球界屈指の身体能力を誇るスーパーアスリートにも衰えが...。心配する声も挙がったが、今年はうって変わって好調を維持。ここまで打率はリーグ2位の.315を残し、15日の試合で1試合3発を記録した本塁打も15本。さらに上でも触れた通り、35歳のシーズンにして自己最多となる51盗塁を記録している。
やっぱり糸井は超人だった――。そう再認識するとともに、オフの動向に注目が集まり始めている。
衝撃の“164キロ撃ち”
ある選手が言った。「メジャーで通用する選手?投手は大谷翔平、野手では...やっぱり糸井さんかな」。
その身体能力の高さは誰もが認めるところ。長らく“最もメジャーに近い男”と言われてきた。
9月13日、札幌ドームで行われた日本ハム-オリックスの試合では、この“メジャーに近い男”同士が激突。3回表、一死二、三塁の場面で打席に入った糸井は、大谷の初球に詰まらされながらも右中間に落とす2点タイムリー。この時、球場のバックスクリーンには「164km/h」の文字が表示されていた。
大谷が投げ込んだ自己最速を更新する直球を初見で、一振りで打ち返してみせたのだからファンもビックリ。「164キロ」という事実が拡散されればされるほど、「それを打ち返した糸井」に対して驚きの声が挙がった。
移籍か、残留か。果たして、男の決断は……。このオフは糸井の動向から目が離せない。
▼ 糸井嘉男
ポジション:外野手
生年月日:1981年7月31日(35歳)
身長/体重:187センチ/88キロ
投打:右投左打
経歴:宮津高-近畿大-日本ハム(03年・自由枠)
[今季成績] 130試 率.315 本15 点67 盗51 安153 出率.402
[通算成績] 1153試 率.302 本123 点522 盗243 安1241 出率.392