誰よりも先に名前を呼ばれた男
10月20日、東京都内にある東京ガスのクラブハウス。一巡目の一番最初、その年のドラフト候補の中で一番に自らの名前を呼ばれた男は、思わず安堵の表情を浮かべた。
今年は5球団が競合した創価大・田中正義や、桜美林大の佐々木千隼といった大学生投手たちが話題をさらったこともあり、あまり大々的に取り上げられることのなかったオリックスの1位・山岡泰輔。
指名後の会見も終始落ち着いた形で進み、オリックスの帽子を被ったりすることや、同僚から胴上げをされたりすることもなく、社会人No.1投手の“運命の一日”は比較的すんなりと終わった。
ダルビッシュも認めた男
やや地味に終わってしまったドラフトであったが、“大物感”という点では今ドラフトでも屈指のものを誇る。
U-18からU-21、そして社会人と3つのカテゴリーで侍ジャパンを経験。各年代で日本を代表する投手として世界を相手にしてきた。
さかのぼること2013年の夏、広島県の決勝で現巨人の田口麗斗を擁する広島新庄高と激突。延長再試合に及ぶ激闘を演じた末、甲子園行きの切符を掴んだ山岡。甲子園では1回戦で明徳義塾高に敗れるも、この時の投球がある人物の目に留まる。テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有だ。
あるファンがTwitterで山岡のことをダルビッシュに薦めると、「それ見て動画見たけど、これは一番だわと思いました」と絶賛。「こういう人はプロにすぐ行くべきだと思います」と太鼓判を押した。
その後、山岡は社会人入りを表明。名門・東京ガスでは1年目から公式戦に出場し、都市対抗野球の大舞台も経験。社会人でもしっかりと実力をつけ、満を持してのプロ入りとなる。
172センチと小柄ながら、最速152キロのストレートはスピード以上に威力満点。キレのある縦横2種類のスライダーを操り、さらにはカットボールにカーブ、チェンジアップにシンカーと多彩な球種を持つ。完成度はトップクラスのまさに即戦力投手。オリックスでも1年目から活躍が期待される。
社会人野球生活の集大成を
そんな山岡にとって、プロ入り前最後の大舞台となるのが社会人日本選手権だ。
来年からは本拠地となる京セラドーム大阪を舞台に、社会人野球の頂点を目指して戦う。東京ガスの初戦は11月3日、相手は東海地区の強豪・ヤマハに決まった。
日本一を置き土産にプロへ...。山岡泰輔の社会人最後の挑戦がはじまる。