コラム

“強い阪神”に勝つために必要なラッキーボーイの存在

打線も投手も絶好調 CS無敗で勢いに乗る阪神


 2014年のプロ野球もいよいよ最終局面。10月25日から日本シリーズが開幕する。パ・リーグのCSを突破したのはレギュラーシーズンの覇者・ソフトバンク。3年ぶりの日本一を狙うチームには、2005年以来9年ぶりにシリーズ進出を果たした阪神が立ちはだかる。

 「立ちはだかる」と表したのには訳がある。おそらく、本来の地力ではソフトバンクに分があるだろう。しかし、両者のCSでの戦いぶりを見る限り、ソフトバンクにとって厳しいシリーズになりそうな要素が散見されるからだ。

 昨年までのCS成績は1勝8敗と、とにかくCSを苦手としていた阪神だが、今年は負けなしの5勝1分で勝ち上がってきた。宿敵・巨人とのファイナルステージでは、敵地で4連勝。球史に残る圧勝劇である。

 その要因はいくつか挙げられるが、まず何より投手陣だろう。阪神のCSでの防御率はなんと1.42。しかも、シーズン中に幾度も不安視する声が上がっていた中継ぎ陣は無失点である。先発からクローザーの呉昇桓に至るまで、軒並み好調なのだ。

 一方のソフトバンク。強力打線に目を奪われがちだが、レギュラーシーズンのチーム防御率はオリックスに次ぐ12球団中2位と、投手力のチームでもある。ただ、日本ハムとのCSでは、攝津正が早々に炎上し大敗を喫したり、森唯斗、五十嵐亮太、デニス・サファテら、勝ちパターンの投手が失点して敗れるなど、安定感を欠いた。

 おまけに阪神はCS中に打線も覚醒。ファイナルステージでの1番・西岡剛から6番・福留孝介までの打率は.344である。投手陣に負けず劣らず、上位打線全員が好調なのだ。これだけ調子の波がそろうということもなかなかない。現状のソフトバンク投手陣が対するには分が悪いと言わざるをえないだろう。


DHの使えない甲子園で重要度を増す細川の打席


 ならば、ソフトバンクに必要なのは“ラッキーボーイ”の出現かもしれない。短期決戦では勝利を決することにもなる存在だ。今年と同じ顔合わせとなった2003年の日本シリーズでは、シーズンチーム打率.297を記録した“ダイハード打線”の中にあって、完全にノーマークだった9番打者・鳥越裕介(現ソフトバンク内野守備走塁コーチ)が大活躍。日本シリーズ制覇の“陰のMVP”と評された。

 今年のラッキーボーイ候補の筆頭は、CSでMVPを獲得した吉村裕基だろう。CSでの打率は.238ながら、6打点はチープトップ。しかも、サヨナラに勝ち越し、先制と、そのほとんどが重要な場面で飛び出したもの。DeNAから移籍2年目。素材としては一級品といわれながらくすぶり続けた男が、初の大舞台で躍動できるか。

 細川亨もラッキーボーイ候補に挙げておこう。今季、細川は自身の打席で代打を58回送られており、これは12球団トップの数字である。2位は同じくソフトバンクの鶴岡慎也で34回だ。勝負の場面で先発捕手に代打を送り、以降はもう一人に交代していたということの表れである。シーズン序盤から正捕手争いをしてきた二人の実力者を抱えるソフトバンクならではの戦略といえよう。

 しかし、DHのない甲子園での試合では、代打を使うのはやはり投手の打席になるだろう。当然、シーズン中とは違い、捕手といえども打撃の重要度が増してくる。その細川がCSで大当たりだったのだ。今季、打率.190、わずか5本塁打の細川だが、CSでは打率.429を記録したばかりか、大一番の最終戦ではCS突破を大きく引き寄せる本塁打まで放ったのである。

 吉村か、細川か、はたまた他に伏兵がいるのか。ラッキーボーイの出現もまた、短期決戦の楽しみの一つである。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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