第1戦の第1打席のライナー もしあれが抜けていたら……
史上2度目のワイルドカード同士の対戦となった今年のワールドシリーズは、サンフランシスコ・ジャイアンツが、青木宣親の所属するカンザスシティ・ロイヤルズを4勝3敗で下し、8度目のワールドシリーズチャンピオンに輝いた。これにより、ジャイアンツは5シーズン中3度ワールドシリーズを制した史上6球団目のチームとなった。
青木は、ワールドシリーズで14打数1安打、打率.071の結果を残した。過去、ワールドシリーズに出場した日本人選手の中で1安打は、2002年の新庄剛志、2004年の年田口壮に並び最少の安打数、打率はワーストだった。
振り返ると、ワールドシリーズ第1戦、第1打席がひとつのポイントになったのかもしれない。ワールドシリーズMVPも獲得した、ジャイアンツの先発バムガーナーと対戦した青木は、痛烈なライナーを放ったが、バムガーナーが反応よく好捕しヒットにならなかった。その後、第3戦から5戦はスタメン落ち、第6戦の2回裏にワールドシリーズ10打席目にしてようやく初安打を記録した。野球に限らずスポーツに「たられば」はつきものだが、もしあの当たりが抜けていたら……青木のワールドシリーズはまた違ったものになっていたかもしれない。
ワールドシールズ敗退後の会見で、青木は涙をこらえながら「本当に一歩及ばずというか。悔しい……。冷静に言葉を出すのも難しい……」と漏らした。自身初となるポストシーズンで、地区シリーズは打率.333、リーグ優勝決定シリーズでも打率.273と結果を残していただけに、一層悔しいものだったことは想像に難しくない。
9月の打率は3割8分に迫る勢い! 中でも左投手に強さを発揮した
ワールドシリーズではチームに貢献したと言えなかった青木だが、レギュラーシーズン9月以降は素晴らしい活躍を見せた。9月の月間成績は87打数33安打、打率.379、出塁率.432。デトロイト・タイガースと熾烈な優勝争いをする中において、1番もしくは2番打者として打線を引っ張ったことは周知の通り。
シーズンを通しては、左打者でありながら左投手に対し強さを発揮した。右投手に対し、367打数95安打、打率.259。左投手に対しては124打数45安打、打率.363。メジャー移籍1年目の2012年は、対右投手.299、対左投手.270。昨季は対右投手.264、対左投手.339と左投手に対する打率が年々上がっている。来季は、右投手に対する打率が上がれば、その存在感は今以上に増すはずだ。あわよくば、首位打者という金字塔すら見えてくる。
ロイヤルズのムーアGMは、「数字以上に貢献度は高い選手」と青木を評価し、残留要請する意向を見せているものの、現在のところ契約を延長するかはっきりしていない状況だ。
「またこの舞台に立ってみたい。素晴らしいポストシーズン」と振り返った青木。来季はどのチームのユニフォームに袖を通し、あと一歩だった世界一を目指すのだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)