20代中心に様変わりした新生ファイターズ打線
2012年のリーグ制覇から一転。昨季はまさかの最下位に沈んだ日本ハム。多くの評論家が今季も下位に予想していたが、ここまで貯金1の3位(2014年5月31日現在)と健闘している。“健闘”と評したのには訳がある。今季のオーダー表からは、一昨年のリーグ制覇を支えた主力の多くが消えている。ファンの間ですら「このメンバーで3位は上出来では?」との声が聞かれるからだ。
移籍した糸井嘉男(現オリックス)や田中賢介(現テキサス・レンジャーズ傘下)はもとより、右膝の負傷で長期離脱を余儀なくされた小谷野栄一、4月に左膝を手術し一軍復帰はまだ先とされる稲葉篤紀、4月25日の対ロッテ戦を最後に一軍出場のない金子誠と、ベテラン勢は軒並み戦列を離れている。
代わってオーダーに名を連ねるのは20歳の近藤健介、22歳の西川遥輝、23歳の中島卓也ら、フレッシュな顔ぶれである。中でも西川はここまで陽や中田らに次ぐチーム4位の5本塁打と奮闘。昨季22盗塁を記録した俊足に長打が加わり、上位打線の一員としてすっかり定着した。チームの顔に成長した陽岱鋼や中田翔もまだ20代。大谷翔平に至っては19歳である。その清新な打撃陣は、チーム打率こそ西武と並びリーグ最低だが、本塁打、得点ともにリーグ最多を記録。若さゆえのもろさと引き換えに爆発力も秘める彼らが勢いに乗れば台風の目となる。
投手王国・広島との対決に打ち勝てば本物
その試金石ともなりえるのが、6月3〜4日の対広島戦。悲願のリーグ優勝に向かってリーグ首位をひた走る今季の広島は、先発から抑えまで抜群の安定感を誇り、往年の投手王国復活をも思わせる。セ・リーグのナンバー1防御率を誇るカープ投手陣を向こうに回し、若きファイターズ打線が打ち勝つようであれば、本物である。
また、若返りという意味では、打撃陣に限った現象ではない。2012年のリーグ優勝に大いに貢献した武田勝と吉川光夫は、今季はともに防御率6点台、1勝止まりとふるわない。白星を先行させているのは20歳の勝ち頭・上沢直之(5勝2敗)に、大谷翔平(4勝1敗)、24歳のルーキー・浦野博司(3勝0敗)、22歳の中村勝(2勝0敗)ら、これまたフレッシュなメンバーである。
けがの功名とまでは言わないまでも、周囲の予想を上回るスピードで選手の世代交代は進み、かつ結果を伴っている。ここまで今季を見る限り、選手をさまざまな角度から評価し、チーム力を安定的に保つために日本ハムが採用しているBOS(ベースボール・オペレーション・システム)が奏功しているといえよう。
オリックス、ソフトバンクの上位球団、また楽天、西武の下位球団とのゲーム差が開いている今、当面のライバルは同率3位のロッテである。そのロッテだが、5月後半には6連勝し、交流戦首位に立つなどチーム状態は上がっている。次の直接対決は7月5日。CS出場圏内生き残りのためにも、交流戦中に引き離されるわけにはいかない。ヤングファイターズの真価が問われる重要な試合が続く。
文・清家茂樹(せいけ・しげき)