補強もニュースも目立たない……
昨季、3位日本ハムに7.5ゲーム差をつけられ4位に甘んじたロッテ。最下位の楽天とはわずかに3ゲーム差と、完全に上位3球団に水をあけられた形だ。にもかかわらず、今オフのロッテは、李大恩(イ・デウン/前カブス傘下アイオワ)を獲得したくらいで目立った補強に乗り出さなかった。逆に、エースとして長く実績を積んだ成瀬善久がヤクルトにFA移籍し、戦力ダウンは免れない。
他球団、特に上位3球団の補強策は積極的だった。昨季日本一のソフトバンクが松坂大輔らを獲得。そのソフトバンクと激しい優勝争いを演じたオリックスはバリントン、中島裕之、小谷野栄一、ブランコを獲得する大補強で注目を集めた。日本ハムも田中賢介ら4選手を獲得し、上位球団の動向は、連日、メディアをにぎわせている。
一方、今オフのロッテに関するニュースはなかなか目につかない。2年連続で観客動員数が12球団最下位に終わるなどチーム人気のかげりもあるが、球界の注目を集めるような大きな動きや今季への期待感が見られないとスポーツメディアが判断しているのだろう。
ファンの中には「はなからさじを投げている」と嘆く声すら聞こえるが、「今季こそロッテが日本一に返り咲く」と鼻息荒いファンの姿もある。その根拠は「ロッテ日本一5年周期説」だ。2005年、2010年とロッテは5年ごとに日本一を成し遂げてきたことを考えると、今年はその周期に該当する。
ただの“都市伝説”だと一笑に付すのは簡単だ。開幕前には評論家はもとより一般の野球ファンであっても自分なりの戦力分析でペナント予想をするだろう。もっともである。では、実際にロッテの戦力を分析してみると、なかなかどうして、その説も大きく外れていないのではないかという気がしてくるのだ。
投手も野手もタレントは豊富!
野手ではなんといってもアルフレド・デスパイネの残留が大きい。純粋な意味での補強ではないが、デスパイネの残留こそロッテ最大の補強といえる。多くのパワーヒッターを輩出してきたキューバだが、そのなかでもデスパイネはレジェンド級。昨季7月末から合流し、もちろん規定打席には到達していないが45試合で打率.311、12本塁打を記録。出塁率と長打率を合わせたOPSという指標では、昨季100打席以上を消化した選手の中でただ一人、1.0を超えている。参加中のキューバ国内リーグでプレーオフに進出すれば今季開幕に間に合わないという懸念材料はあるが2年目のデスパイネが昨季以上の数字を残すのは間違いない。
外野には、驚異の守備力を誇る岡田幸文に2012年首位打者・角中勝也、ハッスルプレーが光るチャッド・ハフマンのほかに、若手のスイッチヒッター・加藤翔平らが控え、左肩を手術したスピードスター・荻野貴司は早期復帰を目指し奮闘中だ。
また、軽快な守備を見せるルイス・クルーズと堅実な守備職人・鈴木大地の二遊間は他球団に引けを取らず、一三塁には井口資仁と日本シリーズ男・今江敏晃のベテラン二人。内野もなかなかのタレントぞろいだ。
一方の投手陣。昨季のチーム防御率4.14はリーグ最悪ではあるものの、顔ぶれを見ればなぜそんな数字になってしまったのか理解できないほど。
成瀬の穴は確かに小さくはないが、昨季新人王・石川歩、唐川侑己、藤岡貴裕のドラ1トリオ、西武のエースとして名を馳せた涌井秀章ら、先発の軸はそろっている。リリーフ陣には、西野勇士、大谷智久の防御率1点台の二人に、2013年セーブ王・益田直也も名を連ねる。
ただ、昨季は10勝の新人・石川がチームの勝ち頭になるなど他の先発陣のふがいなさが目立ち、ケガに苦しんだ益田が防御率4.94に終わるなど、投手陣が本来の力を発揮できていなかった。逆にいえば、それぞれの持てる力を出し切ることができれば、十分に上位進出を狙える戦力がそろっているのだ。
下馬評が低いときほど意外な強さを発揮するのがロッテ。日本一となったシーズンのロッテには、開幕前の低評価をはねのける一体感と勢いがあった。2005年の日本シリーズでは阪神を相手に4試合の合計得点で33対4と圧倒。2010年にはレギュラーシーズン3位から日本一に勝ち上がり「史上最大の下克上」ともいわれた。
チームリーダーとして2度の日本一に貢献した里崎智也は、自身の引退あいさつで「マリーンズが最も輝くゴールデンイヤー」と5年周期説に触れ、後輩たちに奮起を促している。その期待に応え、再び下克上を起こせるか。5年前、10年前と同じような“チーム一丸の雰囲気”が今季のロッテベンチに蔓延するようなら、「ロッテ日本一5年周期説」の継続も現実味を帯びてくる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)