与四球の増加と奪三振の減少が不振の一因
昨季、3年ぶりの日本一に輝いたソフトバンク。今年のキャンプではアメリカから帰ってきた松坂大輔にファンやマスコミの視線が集まった。その松坂の日本球界復帰、そして工藤公康新監督のもと、日本一連覇に向け期待が高まるが、昨季の最後まで優勝を争ったオリックスが大補強したこともあり連覇は楽な道のりではないだろう。
そこで注目したいのがエースの攝津正だ。やはり彼の力なくして連覇はないだろう。昨季は右肩筋疲労もあり規定投球回に達することができず、4年連続で2ケタ勝利を挙げたものの不本意なシーズンだった。
数字を紐解いていくと、15勝を挙げた2013年シーズンと比べ防御率3.05から3.90に下がったが、被打率は.229から.228とほとんど差がなかった。
では、防御率が下がった要因は何だろ?
まず、要因として考えられるのは与四球率の増加だ。2013年は2.33だった与四球率が昨季は自身プロ入りワーストの3.96。逆に奪三振率は減っていて、2013年の8.09から昨季は5.71である。被打率がさほど変わらなくても、四球が増え、奪三振が減ってしまっては、苦しいピッチングになってしまうのは当然だ。
また、打たれた安打の内容も悪かった。
昨季、攝津が打たれた113安打のうち長打が41本。安打のなかで長打が占める割合は36.6%で、2013年の26.1%から10%以上も上がってしまった。低めへの制球が持ち味だった攝津だが、昨季は高めに浮いてしまうことが多く、それが長打の増加にもつながったと推測できる。
少しでも多くゴロを打たせることが復調につながる
昨季まで楽天の投手コーチを務め、今季からソフトバンクに加わった佐藤義則投手コーチは、攝津が不振に陥った理由として「球種を増やしすぎ、フォームが安定しなくなった」と語っている。
140キロ前後のストレートに、ドロンと落ちるカーブと鋭く変化するシンカーが持ち味だった攝津。昨季はそこにカットボール、シュートを加えた。球種を増やすことで打者により考えさせようとしたのだろうが、得意球だったカーブとシンカーのキレが落ちてしまっては本末転倒。よって、今年の春季キャンプでは、カットボールとシュートを封印した。 攝津本来のカーブとシンカーを取り戻すため、調整に専念したという。
このオフに本拠地ヤフオクドームが改修され、外野にホームランテラスと呼ばれるラッキーゾーンのようなものが設置された。本塁から両翼の距離は変わらないものの、右中間と左中間は最大で5メートルも狭くなり、27日の練習試合では昨季までならフェンス直撃だった当たりが本塁打になった。
味方の本塁打が増えるメリットはあるが、投手としてはこれまで以上に低くていねいに投げる必要がある。エース攝津復調のカギは、四球を減らし三振を多く奪うこと。そして、シンカーを低めに集め長打を防ぎ、ゴロをどれだけ打たせることができるかにかかっていると見ていいだろう。
文= 京都純典(みやこ・すみのり)