コラム

“打てる捕手”から“勝てる捕手”へ! 黒田博樹の使命は会沢翼の育成にあり

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今シーズン正捕手獲りへ期待が高まる広島の会沢翼 ©BASEBALLKING
20150209広島0918

捕手としての技術はまだまだ発展途上


春季キャンプに臨むに当たり「開幕マスク」を奪い取ることを堂々と宣言した会沢翼(広島)。その言葉通り、会沢は開幕スタメンを勝ち取った。

 昨季は石原慶幸に次ぐ65試合に出場し、今季はレギュラー奪取が期待される。会沢が評価されているのはパンチのある打撃力だ。昨季は10本塁打をマーク。本塁打率(本塁打1本を打つために必要な打数)はなんと17.90。10本以上の本塁打を記録した日本人選手の中では中村剛也(西武)に次ぐ12球団2位である。

 本来、守備面が重視される捕手が打撃で貢献できれば、チームに大きなアドバンテージを与えることになる。だからこそ、チームやファンが会沢にかける期待は大きい。ただ、その本分である守備においては、会沢はまだまだ発展途上だ。

 キャッチング、スローイングの正確性では石原に及ばず、リードの偏りを指摘する声も時折聞かれる。経験が求められる捕手というポジションゆえ、当然ながら学ぶべきことは多い。

 とはいえ、捕手を育てるのはバッテリーコーチや先輩捕手だけとは限らない。多くの経験が必要な捕手はレギュラーを勝ち取るころには比較的年齢が高くなる傾向がある。加えて「リード」という言葉のイメージもあってか、ベテラン捕手が若い投手を育てる図式をイメージしがちだ。しかし、過去にはベテラン投手が若い捕手を育てた例も多い。

江夏豊が育てた大宮龍男、山田久志が育てた中嶋聡…


 20世紀最高の投手とも呼ばれる江夏豊(元阪神他)は1981年に移籍した日本ハムで大沢啓二監督から「大宮龍男を一人前にしてほしい」と直々に請われた。豪腕のイメージが伴う江夏だが、晩年は変化球を巧みに使い分ける投球術こそが真骨頂。江夏から徹底的に配球を鍛えられた大宮は、この年から一気に出場機会が増え、リーグ優勝も経験。レギュラー捕手へと成長した。

 阪急一筋20年、サブマリン投法・山田久志がかわいがったのが中嶋聡(現日本ハム)だ。阪急入団当初、キャッチング、スローイング、リード、すべてが未熟な中嶋だったが、山田はその強肩にほれ込んだ。投手が気持ち良く投げられるよう徹底してキャッチングの指導を行い、実戦では納得するサインを中嶋が出すまでうなずかず配球を覚え込ませた。

 1988年、自身の引退試合であり阪急ブレーブスとしての最後の試合には、プロ2年目の中嶋をスタメンにするよう山田自ら上田利治監督に願い出たという。その後の中嶋は「メジャーに最も近い捕手」とまで呼ばれるまでに成長した。

 他にも、北別府学と西山秀二(広島)、工藤公康と城島健司(ダイエー)など、同様の例は少なくない。会沢にとってはもちろん黒田博樹だろう。

 3月29日のヤクルト戦でバッテリーを組んだ二人は見事チームを勝利に導いた。ハイレベルのツーシーム、スライダー、フォークを卓越した制球力で投げ分けるのが黒田の特徴。実戦を通して黒田のボールを受ける中で、配球はもちろん、投手心理に至るまで、会沢は多くのことを学ぶことになるだろう。

 黒田がやるべきことはチームに勝利をもたらすことだけではない。日米通算183勝の大投手が、“打てる捕手”を“勝てる捕手”へと成長させたとき、24年ぶりの広島優勝がぐっと近づく。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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