相手投手の左右を苦にせず逆方向にも強い打球を打てる
大久保博元新監督のもと、最下位からの巻き返しを計る楽天。18日現在、17勝20敗2分で、首位と4.5ゲーム差の4位と、なかなか波に乗れない戦いが続いている。苦戦の一因として、打線の不振がある。チーム打率.243はパ・リーグワースト、124得点もリーグ最少だ。投手陣はチーム防御率がリーグ4位の3.41と踏ん張っているだけに、打線の奮起が望まれる状況だ。
そんな中、さすがのバッティングを見せているのが銀次だ。パ・リーグ3位の打率.329。4月中旬以降は不動の3番として打線を引っ張っている。
銀次の特長は、そのバランスの良さにある。対右投手に打率.333、対左投手に打率.317と投手の左右を苦にしない。打球の方向を見ても、レフト方向に67、センター方向に29、ライト方向に49。そのうち安打は、レフト方向に23本、センター方向に15本、ライト方向に11本。逆方向に強い打球が打て、状況に応じたバッティングもできる。
そして、もうひとつ銀次の特長は三振の少なさだ。昨季の45三振は、今江敏晃の43に次いでパ・リーグの規定打席に達した選手の中で2番目に少なかった。今江は23四球と早打ちの傾向がありその分三振も少ないのだが、銀次は43四球とボールを見極めることができる。2ストライク時の打率も.298と、規定打席に達した12球団の選手の中で最も高かった。
打率.320、30三振未満、50四球以上は過去に6人
優れたミート力で三振の少ない銀次だが、今季はさらに磨きがかかっている。
ここまでの三振数は、たったの6個。もちろん、パ・リーグの規定打席に達している選手では最も少ない。そして、追い込んでも相手バッテリーは気を抜くことは許されない。2ストライク時の成績も47打数19安打、打率.404と驚異的だ。フルカウント時も打率.400、1三振8四球と、三振よりも四球のほうが多く、簡単には凡退しない。
ここまで39試合で6三振、15四球の銀次だが、どれほど驚異的な数字なのだろうか。現状のペースで三振と四球を記録していくと、計算上シーズントータルでは22三振、55四球になる。2リーグ制以降、打率.320以上で30三振未満、50四球以上の選手は6人(7回)しかいない快記録だ。
1951年藤村富美男(阪神)、54年渡辺博之(阪神)、58年田宮謙次郎(阪神)、60年長嶋茂雄(巨人)、66年榎本喜八(東京)、68、74年の張本勲(日本ハム)と球史に残る好打者ばかりだ。
首位打者争いで昨季2位、2013年は4位とあと一歩で逃してきた銀次。自身初の打撃タイトル獲得なるかにも注目だが、球史に残る快記録にどこまで迫ることができるだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)