おかわり君が止まらない。
今季78試合で25本塁打、そして試合数を超える79打点でパ二冠王独走中。さらにリーグトップの22二塁打を放ち、OPS.980を誇るスラッガー。加えてここまでの打率は.291と、09年に記録した自身最高打率.285を上回る勢いだ。
通算300本塁打まであと3本。1000本安打まで9本。プロ14年目、31歳にしてキャリアの絶頂を迎えつつある西武ライオンズ不動の4番打者、中村剛也。
「今年一年はお前を使い続けるからな」
前年わずか7本塁打に終わり、逆襲を誓った08年キャンプで当時の渡辺久信新監督からそう告げられたシーズンに、中村は46本塁打で初のタイトルに輝いた。
昨年は故障で33試合に欠場しながら、34本塁打で自身5度目の本塁打王を獲得。これで規定打席に到達したシーズンはすべて本塁打王を獲得していることになる。
今季99三振も、得点圏ではわずか29三振。昨季も空振り率は高くても、ボール球スウィング率は22.0%とまさに豪快かつ好球必打のおかわり打法。7月1日のソフトバンク戦ではパ最多タイの通算14本目の満塁弾を放ち、歴代1位の15本の記録を持つ世界の王に1本差と迫った。
もはやその一振りにあらゆる記録がついてまわる男。6度目の本塁打王獲得となれば、青田昇、中西太、落合博満の5回を抜き、王貞治15回、野村克也9回に次ぐ歴代単独3位に浮上する。
いまや日本球界のレジェンドたちと肩を並べる長距離砲へと進化した背番号「60」。セリーグのホームランキング獲得選手は14年エルドレッド(広島)、13年~11年バレンティン(ヤクルト)、10年ラミレス(当時巨人)、09年ブランコ(当時中日)と助っ人選手が独占しているが、近年のパリーグは中村のひとり勝ち状態である。
現役選手の通算本塁打数1位は小笠原道大(中日)の378本。続いて松中信彦(ソフトバンク)352本、阿部慎之助(巨人)350本、高橋由伸(巨人)320本といった錚々たる顔触れが並ぶ中、おかわり君は現在7位の297本。31歳10カ月という年齢は上位10人の中でも飛び抜けて若く、近い将来、中村剛也は「21世紀最高のホームランアーティスト」と称されることになるだろう。
あるMLBベテランスカウトはこんな言葉を残している。
「今のNPBでパワーヒッターと呼べるのは、ナカムラただひとりだ」
それは正しいと私も思う。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)