本調子とは言えない投球が続いた復帰当初
昨年、パ・リーグ最多の16勝を挙げ、防御率1.98と二冠を獲得。自身初の沢村賞にも輝いたオリックスの金子千尋。シーズンオフにはポスティングシステムでのメジャー移籍も視野に入れながら国内FA権を行使し、その動向が注目された。
11月末に右肘骨棘の除去手術を受けたこともあり、最終的にはオリックス残留を表明。勝率2厘の差で逃したリーグ優勝を目指すため、リハビリに専念した。
迎えた今季、金子のリハビリは予定よりも長引くことになる。チームは大型補強を敢行したが、エースを欠いた影響は計りしれず、開幕から波に乗れなかった。
5月23日のロッテ戦でようやく今季初登板を果たすも、3回6失点。6月2日には成績不振により森脇浩司監督の休養が発表された。皮肉にも、金子が今季初勝利を挙げたのは6月6日の中日戦だった。
今季、ここまで金子の成績は9試合に登板し4勝4敗、防御率4.02。ここ数年の金子を考えれば、本調子とはまだ言えないだろう。
ゴロを打たせる投球術に変化なし
しかし、他の数字を見れば金子らしさが随所に表れている。
56イニングを投げ、与えた四球は13。与四球率は2.09。昨季の1.98には及ばないが、与死球もゼロと制球力は健在だ。
ゴロアウトとフライアウトの割合(※GO/AO)を見ても、ゴロアウトが64、フライアウトが46でGO/AOは1.39。昨季の1.44と大きな差はない。
金子のピッチングスタイルは、日本ハムの大谷翔平のように160キロ近い速球と鋭い変化球で三振の山を築くわけではなく、低めを丹念についてゴロを打たせるものだ。手術を経験しても、そういった金子のピッチングスタイルに大きな影響はなかったと言っていいだろう。
あえて心配な点をあげるならば、7月のGO/AOが1.11とフライアウトの割合が少し増えていること。今後の変化に注目すべきかもしれない。
7月20日の西武戦では、7回を投げ被安打4で今季初めて無失点に抑えた。チームは36勝50敗2分で、首位と19.5ゲーム差の最下位に沈んでいるが、クライマックスシリーズ進出の権利を得られる3位までは8ゲーム差と、今後の巻き返しによっては十分に手が届く可能性を秘めている。
大きく期待を裏切ってしまったファンのためにも、やはりここはエースの奮起に期待するしかない。残り50試合あまり、沢村賞投手の意地を見せてくれるだろうか。
(※)ゴロアウト/フライアウト比率
セイバーメトリクスの指標のひとつで、ゴロアウト(GO)の総数をフライアウト(AO)の総数で割り、ゴロアウトとフライアウトの比率を調べる指標。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロアウトの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライアウトの割合が高い投手となる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)