6月以降、ソフトバンクの勝率は驚異の.775!
ソフトバンクの独走が止まらない。6月半ばまでは日本ハム、西武と首位を争っていたが、6月以降は31勝9敗、勝率.775という驚異的な戦績で、2位・日本ハムとのゲーム差は8.5にまで広がった。シーズン終盤に首位チームがスパートをかけ後続を引き離す例は珍しくないが、今季のソフトバンクは、超ロングスパートともいえる独走を繰り広げている。貯金の数、なんと30。「強い」という言葉しか浮かばない、今季のチーム状態である。
もちろん、CSを勝ち抜くことで日本シリーズへ進出する可能性は他球団にも残っているものの、リーグ優勝に関しては諦めムードのファンも少なくないだろう。ただ、長いプロ野球の歴史の中には、奇跡的な大逆転優勝を果たしたチームも少なからず存在する。
1963年の西鉄は14.5ゲーム差をひっくり返し優勝
1996年はシーズン半ばまで首位を走っていた広島と巨人の最大ゲーム差は11.5にまで広がっていた。しかし、11ゲーム差で迎えた7月9日の広島戦から球史に残る快進撃が始まる。
2回2死走者なしで7番・後藤孝志が左翼線に二塁打を放つと、6番・清水隆行に至るまで、当時のプロ野球記録である1イニング9者連続安打を記録。この回、一挙7点を奪った巨人が勝利した。その後、じわじわとゲーム差を縮めていき、100試合目で首位に立つと、10月6日の中日戦で勝利。見事に逆転ドラマを完成させた。
2008年の巨人は序盤から低迷。すると、原辰徳監督は不調の主力に代えて、若手・中堅選手を次々に登用。坂本勇人、亀井義行、鈴木尚広、山口鉄也ら、現在も一軍で活躍する選手たちがそろって頭角を現した。
独走していた阪神との最大ゲーム差は13。しかし、シーズン終盤に阪神との直接対決に7連勝するなど驚異的な追い上げを見せ、10月10日に優勝。このとき、残り試合は阪神が2、巨人はわずかに1。まさしく土壇場での奇跡の逆転であった。
過去、最も大きなゲーム差をひっくり返して優勝をもぎ取ったのは、1963年の西鉄だ。7月10日の段階で、首位・南海とのゲーム差はなんと14.5。その後、ロイ、バーマ、ウィルソンの3外国人が活躍し、鉄腕・稲尾和久は8年連続の20勝をマーク。近鉄との最終4連戦を全勝し、南海を1ゲーム差でかわして逆転優勝を果たした。
確かにソフトバンクと2位の間に立ちはだかる8.5ゲーム差は大きい。今後は残りのCS進出枠をいかに確保するかが5球団の“現実的な戦略”となるだろう。しかし、過去に起こった事実が物語るように、奇跡の逆転劇が起きる可能性も決してゼロではない。今季、そんなドラマは生まれるだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)