本塁打を打つと負けない!
8月5日、日本ハム戦に勝利したソフトバンクは、1989年の福岡移転後では球団史上最速で優勝へのマジックナンバー「38」を点灯させた。残り試合50試合弱で2位・日本ハムに9.5ゲーム差をつけていることを思えば、パ・リーグ連覇は濃厚と見ていいだろう。
そんな状況ゆえ、優勝争いというよりもソフトバンクがどれだけ早くリーグ優勝を決めるかに焦点が行きつつあるが、クライマックスシリーズを考えると注目はロッテ。後半戦に入って7連勝を記録するなど、12勝5敗でソフトバンクに次いで高い勝率を誇り、西武が球団史上ワーストの13連敗を喫したこともあって3位に浮上した。
そのロッテ打線の4番に座るのがアルフレド・デスパイネだ。今季ここまで58試合に出場し、打率.255、14本塁打、44打点。キューバ代表でプレーするために日本を離れたり、ケガもあったため出場試合数は多くないが、14本塁打はルイス・クルーズと並びチーム最多の本数である。
また、デスパイネが本塁打を打つとチームは負けないというジンクスもある。今季、デスパイネが本塁打を打った試合でロッテは13戦全勝(※1試合2本が1度あり)なのだ。昨季から数えると、通算15連勝にまで数字が伸びている。
8月7日のソフトバンク戦では8回に五十嵐亮太のナックルカーブを叩き、逆転の3ラン。五十嵐はメジャーから日本に復帰後、許した本塁打は13年4月7日に中田翔(日本ハム)に打たれた1本だけで、中田の後は打者557人と対戦し1本も打たれていなかった。本塁打をめったに打たれない投手から放った値千金の一発だった。
05年、10年と似たシーズンになりつつある
外国人選手、とくに中南米出身の選手は暑くなる夏場以降に強いとも言われるが、デスパイネも例外ではない。昨季、デスパイネは9月に打率.369、5本塁打と暴れた。これからの季節、デスパイネの打棒がさらに脅威となるはずだ。
ところで、00年以降は05年、10年と日本一に輝いているロッテにとって、今季は5年に1度の“ゴールデンイヤー”に当たる。後半戦、チームが調子を上げてきたこともあり、徐々にそういった声を聞く回数も増えてきた。
05年はレギュラーシーズン2位からプレーオフを勝ち上がり、10年は史上初めて3位から日本一に輝いて「史上最大の下剋上」とも言われた。
最近2度の日本一と今季を比べるといくつか共通点がある。05年、打線の中心としてチームを引っ張ったのはベニー・アグバヤニ。10年は、金泰均が4番としてけん引していた。
一方、最下位に終わった11年はカスティーヨが多くの試合で4番に座ったが、打率.269、5本塁打と物足りない数字。翌12年はホワイトセルが中軸を担ったが、打率.309、9本塁打と打率こそ高かったものの長打力に乏しく、チームは5位に終わった。ロッテが好調の年は、外国人野手がそれなりの結果を残していると見ることができる。
また、05年、10年ともにレギュラーシーズン1位のソフトバンクをクライマックスシリーズ(2005年当時はプレーオフ)のセカンドステージで倒し、日本シリーズに進出したという実績も侮れない。今季、ソフトバンクとロッテの対戦成績はソフトバンクの10勝7敗と勝ち越してはいるが、ソフトバンクがパ・リーグで最も苦手にしているチームがロッテなのである。
それらのことを考慮すると、ソフトバンクにとっては日本ハムよりも不気味な存在に映っているかもしれない。そんなロッテが、残りのシーズンでどのような戦いを見せるか、大いに注目したい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)