コラム

虎が待ち望んだ和製大砲、阪神・江越の球歴とは?

福留とマートンの間を守る俊足・強肩のセンター


 大混戦のセ・リーグで首位争いを続ける阪神。チーム防御率、チーム打率ともにリーグ5位なのだが、いざ試合となると、粘り強さ、勝負強さを発揮する。

 シーズンオフに目立った補強をしなかったなかで、新たな戦力となっているのがドラフト3位のルーキー・江越大賀だ。7月下旬から、7番・センターでスタメン出場。ライト・福留孝介、レフト・マートンという主軸の間を守っている。

 江越は1993年3月生まれの22歳、長崎県出身。小学校2年でソフトボールを始め、南島原市立西有家中学校で軟式野球部に入部。そこから本格的に野球に取り組むようになった。週末にやる長距離走が大の苦手で、「野球が嫌いになった」というほど走らされたという。その一方、「おかげで足腰が強くなったと思う」とも振り返る。

 中学卒業後は県内の強豪私立・海星高校へ。投手として入部したが、2年夏から外野手に。身体能力抜群で、3年生になる頃にはドラフト候補として取り上げられるようになった。俊足と遠投120メートルの強肩を生かした外野守備は「一度見たら忘れられない」とまでいわれたほどで、選球眼、ミート力、パンチ力を備えた打撃も魅力。さらに、マウンドに立てば、威力あるストレートとキレ味鋭いスライダーを投げ込んでみせた。しかし、主力として臨んだ3年夏の県大会は決勝戦敗退。あと一歩、甲子園に届かなかった。

 高校野球を終えた江越はプロ入りを希望したというが、周囲のすすめもあり、東都大学リーグの名門・駒沢大学へ。1年春の開幕戦、神宮球場バックスクリーンに飛び込む特大ホームランが大学初安打という衝撃デビューを飾った。

 しかし、駒沢大は、激戦のリーグで苦戦を強いられていた。1年春、秋とも5位。そんな中、江越は2年春、3年秋、4年秋に、外野手のベストナインに選出。3年時は、7月に行われた日米大学野球選手権の日本代表にも選ばれ、全5試合のうち4試合に出場(うち2試合スタメン)し、優勝に貢献した。なお、このチームで主将を務めたのは、現在のチームメートである梅野隆太郎(福岡大4年→阪神)。投手陣には大瀬良大地(九州共立大4年→広島)、山崎康晃(亜細亜大3年→DeNA)、山崎福也(明治大3年→オリックス)がいて、野手には岡大海(明治大4年→日本ハム)、中村奨吾(早稲田大3年→ロッテ)らがいた。

 リーグ戦では3年秋に最下位となり、1、2部入れ替え戦を経験。しかし、4年秋は4番打者として、打率.357をマーク。名門・駒大26季ぶりの復活優勝に貢献した。さらに、11月に行われた明治神宮大会では、攻守にわたる活躍で13年ぶりの優勝に貢献。2回戦で野間峻祥(現・広島)擁する中部学院大学を倒し、決勝では明治大学に完勝。大学日本代表でチームメートだった山崎福を打ち崩してのものだった。


フルスイングからの一発長打でチームに勢いを!


 神宮大会前に行われた2014年秋のドラフト。右打ちの外野手が不足している阪神にピタリとはまり、俊足、強肩、長打もある即戦力として3位指名。駒大の大先輩・新井貴浩がつけていた背番号25を与えられたのは大きな期待の表れである。

 期待に応えてキャンプから一軍に帯同し、開幕一軍。しかし、打率1割を下回り、4月13日に二軍降格。そこで、掛布雅之氏(GM付育成&打撃コーディネーター)の指導を受けるなどしてキッカケをつかみ、26日に再昇格を果たした。2日後の28日のヤクルト戦、甲子園球場左中間にプロ第1号。初のお立ち台で「歓声がすごかったです。鳥肌が立ちました」と声を震わせた。

 しかし、高校、大学時代から課題とする打撃が安定せず、二軍降格。ウエスタンリーグで結果を残し、夜は一軍の試合をじっくり見て、プロの配球を研究したという。努力が実り、7月21日に4度目の一軍登録。翌22日の巨人戦、24日のDeNA戦では、2試合連続ホームランを放ってみせた。阪神の新人が2試合連続ホームランを放ったのは、岡田彰布氏以来35年ぶりのこと。和田豊監督は試合後、「明日も期待してもらって大丈夫」とスタメン起用を確約した。翌25日の試合では3三振に悪送球と精彩を欠いたが、26日もスタメン起用。プロ初となる猛打賞で名誉挽回してみせた。

 一軍昇格後の8試合で打率.321、3本塁打と大爆発。プロ初ホームランで初打点をあげて以来、「江越が打点をあげれば全勝」という不敗神話まで生まれた(15日のヤクルト戦で打点を挙げるも敗戦)。しかし、プロの世界は厳しく、現時点では打率1割台と低迷。それでも、和田監督とチームの方針は「7番でのびのび打たせる」とブレがない。和田監督は「現有戦力で最も伸びしろがある選手」と評価しており、「彼は振って覚える選手。フルスイングを続けてほしい」と一軍で育てていくことを決意している。

 もともと評価の高い守備、走塁に加え、フルスイングからの一発長打は大きな魅力。大学時代と同様、長く優勝から遠ざかるチームに勢いを与える存在となれるか。大混戦のセ・リーグ、阪神の7番・センターに注目していきたい。

文=平田美穂(ひらた・みほ)
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