比例しない個人打撃タイトルとチームの優勝
セ・リーグの投手成績以外、今季の個人成績主要部門は1球団の選手に偏る傾向が見られる。
パ・リーグの打撃成績では、秋山翔吾(西武)が柳田悠岐(ソフトバンク)と首位打者を争い、中村剛也(西武)が本塁打と打点で独走中。「これでどうして勝てないんだ?」と嘆く西武ファンの声も聞こえてくる。
ただし、意外なことに打撃の個人タイトルとチーム成績が比例しないことは決して珍しくない。パ・リーグに限れば、優勝チームの選手が打撃主要3部門のタイトルを獲得したという例は、2011年に首位打者となった内川聖一(ソフトバンク)までさかのぼる。過去5シーズンで見ても、内川が唯一の例なのだ。
もはや、「タイトル獲得者の所属チームは優勝できない」といってもおかしくないくらい。もちろん、よく言われるように、チーム成績が悪いからこそ個人成績に集中できるという側面もあるだろう。しかし、見方を変えれば、個人成績に直接つながらないチームプレーこそ優勝に必要なことだとも言える。
スラッガーにとって、三振は宿命だが……
今季の西武は“大阪桐蔭トリオ”や秋山、メヒアらが居並ぶ強力打線により、シーズン序盤は首位争いを繰り広げていた。しかし、7月からの大型連敗により急激に失速。その要因のひとつは、“ムラのある打線”だろう。
1試合あたりの平均得点は、開幕から6月までの4.32点に対し、7月は3.33点にまで下降。チーム防御率がリーグワースト2位のチームにとって、打線の停滞は致命傷となる。
リーグ屈指の強力なラインアップとして注目される西武打線には、明白な欠点がある。とにかく三振が多いことだ。
現在までのパ・リーグ個人三振数は、中村の139個に始まり、メヒアが119個、森友哉が113個、そして浅村栄斗が101個と、ワースト4位までを西武勢が独占している。
豪快なフルスイングの代償として、三振はスラッガーにとっての宿命だ。それがまた魅力だと見る向きもある。しかし、大砲が並ぶ打線には破壊力がある一方で穴も多い。三振は打線の流れを断ち切り、アウトカウントをひとつ増やすだけなのだ。
ボールが前にさえ飛べば、相手がエラーするかもしれないし、内野安打になるかもしれない。仮にボテボテのゴロだったとしても、塁上の走者を次の塁に進めることができるし、走者が三塁にいればしぶとく1点を勝ち取ることができるかもしれない。つまり、チームバッティングを要される場面では、長打を捨ててでもチームのためになるバッティングをしなければならないということである。
西武は昨季もチーム合計1234三振で、ダントツのリーグワースト(2位は日本ハムの1092)であった。もちろん、三振を恐れて小さな打撃になってしまっては、西武打線の魅力をそぐことにもなる。しかし、バランスの取れた本当に怖い打線にするためには、なんらかの改革が必要なのかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)