一軍首脳陣は12球団で最も若い平均44歳
10月2日、打者・雄平の鋭い打球が一塁線を抜いた瞬間、14年振りとなるヤクルトのリーグ優勝が決まった。
ベンチでは真中満監督のほか、杉村繁、三木肇、高津臣吾、野村克則らコーチ陣が歓喜の輪を作る。首脳陣が選手と一緒になって涙を流し、飛び跳ねて喜びを爆発させるシーンは非常に印象的だった。もちろん14年振りにリーグ優勝を決めたのだから、喜ぶのは当然としても、優勝の瞬間にヤクルト首脳陣ほど感情をあらわにするというのは珍しい光景だったと思う。
この、選手たちと一丸になれる首脳陣の若さこそ、今季のヤクルトが2年連続最下位からの大逆転優勝を果たした要因のひとつではないだろうか。事実、今季のヤクルト首脳陣(一軍監督・コーチ)の平均年齢(2015年12月31日時点の年齢)は、DeNAと並び12球団で最も若い44歳だ。最高齢である阪神の52.3歳とは実に8歳以上の差がある。
【12球団一軍首脳陣平均年齢】
<セ・リーグ>
ヤクルト 44歳
巨人 49.6歳
阪神 52.3歳
広島 47.3歳
中日 51.4歳
DeNA 44歳
<パ・リーグ>
ソフトバンク 48.8歳
日本ハム 48歳
ロッテ 48.6歳
西武 44.5歳
オリックス 48.5歳
楽天 47.4歳
昨季まで指揮を執った58歳の小川淳司元監督が退き、44歳の真中監督が就任すると同時に今季から一軍に入閣を果たしたのは、ともに38歳の三木、宮出両コーチに、42歳の野村コーチ。その結果、唯一の50代が杉村コーチという若き一軍首脳陣に生まれ変わった。選手寿命が延びた昨今のプロ野球界においては、まだ現役でもおかしくないような年齢のコーチを中心としてヤクルトは戦ってきた。
選手との密なコミュニケーションが生んだ一体感
真中監督は、二軍監督時代から選手とのコミュニケーションを重視し、年齢だけではなく選手との距離も近い監督と評されていた。そして、ただ年齢が若いだけでなく、その“真中イズム”をしっかりと実践できるコーチ陣であったことが大きかった。もちろん、そういった考えを共有できるコーチ陣で脇を固めたということである。
報道されているように、高津コーチは、感情的になりがちなバーネットに自身の経験から冷静さを保つ重要性を説き、絶対的守護神へと変身させた。参謀として真中監督自ら招聘した三木コーチは、春季キャンプでキャッチボールの相手を毎日変えさせ、選手に仲間としてのコミュニケーションを深めさせた。そして、野村コーチと捕手・中村悠平が試合中に延々と話をしているシーンも、毎日のお決まりの儀式だった。
1990年代、野村克也監督のもと、ID野球で黄金期を歩んだヤクルト。そのID野球をヤクルトの伝統として受け継ぎながら、真中監督と若きコーチ陣による“コミュニケーション野球”で、新たな黄金期を作り上げる可能性は十分にある。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)