コラム 2015.10.07. 11:00

盟主交代 日本シリーズベスト選(2)-元・名物番記者が語るプロ野球ちょっと裏話-

 巨人の監督には不文律がある。古くは水原茂(後に円裕)、川上哲治から長嶋茂雄、藤田元司、王貞治、堀内恒夫そして現在の原辰徳まですべてが生え抜きの主力打者かエースがその座についてきた。人気球団であり、「球界の盟主」を自認する老舗の指揮官はそれくらいの実績が必要と言うわけだ。

 しかし、その巨人の監督にはなれなくても、いやそれ以上の人材が流失していた。まさにV9時代の頭脳と称された広岡達朗と森昌彦(後に祇晶)。古巣の強みも弱点も知り抜く二人がヤクルトを日本一に育て上げた後に西武ライオンズの指揮官とヘッドコーチとして日本シリーズに駒を進めてきたのは83年のこと。対峙したのは藤田率いる巨人で、この初対決はその後の球界覇者の立場を決定づける意味でも大きなターニングポイントとなった。

 巨人が江川、西本、中畑、山倉らの第一次長嶋門下生に原、槙原らのフレッシュな人材を加えていたのに対して、西武は田淵、山崎といった移籍組に東尾、大田らの生え抜きベテランと石毛、森繁和、松沼兄弟ら所沢移転後に獲得した若手が主力に成長していた。

 余談になるが両球団には江川卓を巡る因縁もあった。法大卒業時にドラフト指名したのは西武の前身のクラウンライターライオンズ。

 この指名権は球団譲渡後の西武に受け継がれる。当時の西武総帥・堤義明は政界まで動かす実力者だったが、結局、江川の巨人志望を打ち破ることが出来なかった。この過程で西武鉄道の沿線では読売系のスポーツ紙を駅売店から一時締めだすほどの異常事態に発展した。名門対新興勢力の図式にドラフトの確執まで加わり、前人気は高く、チケットは即日完売ならテレビの視聴率も40%を越える数字を叩きだした。

 初戦は西武が田淵の3ランなどで早々と巨人先発の江川をKO。すると第2戦は西本がライオンズ打線を4安打完封。この勢いで続く試合も中畑のサヨナラ打で巨人が主導権を握ったかに見えた。ところが、ここから両チームの意地と意地がぶつかり合い筋書きのない激闘が始まる。第4戦を西武が逆転で制すも第5戦は巨人が同点で迎えた最終回二死無走者から助っ人・クルーズが劇的なサヨナラアーチをかけてついに王手だ。さらに運命をかけた第6戦も1点ビハインドの巨人が9回、篠塚、原の四球などで好機を築き中畑の三塁打でついに逆転。この裏を抑えれば藤田の胴上げとなるはずだった。指揮官は大役を西本に託した。しかし、西武も二枚腰の粘りで同点に追いつくと延長10回には江川をマウンドに引きずり出し、最後は代打の金森が二死から左越えにサヨナラ劇勝。決着は最終戦にもつれ込んだ。

 ここまで6戦中、3試合がサヨナラゲームと言う史上類を見ないスリリングな対決は最終戦にもつれた。巨人が山倉の本塁打などで2点リードのまま終盤に突入するが7回に先発の西本がレオ打線につかまった。無死一、二塁のピンチに大田の投ゴロをはじいて満塁。その後、テリーに走者一掃の二塁打を浴びて万事休す。西武はこのシリーズ用にリリーフ役に回った東尾が最後を締めて
伝説の死闘に終止符が打たれた。

 最大の分岐点は第6戦の藤田の投手起用だろう。あと、1イニングで日本一の場面で江川ではなく中2日の西本だった。このシリーズ前から調子の上がらない江川は第4戦で右足に肉離れまで起こしていた。西本一人に頼らざるを得ないしわ寄せが最後の最後に致命傷となった。

 共に川上巨人の主力でありながら、秘蔵っ子であり続けた藤田と袂を分かった広岡。球史に残るシリーズを制した広岡西武はその後、森が監督に就任し二人で計11年間に8度の日本一に就く。球界の盟主は確実に代わった。

第6戦のスコア
巨人|100 000 002 0|3
西武|000 011 001 1x|4
勝:永射
敗:江川

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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