地上波での放送が激減した日本のプロ野球中継
日本シリーズやオールスターゲームが行われた翌日、新聞やネットにこんな言葉が躍る。
「第●戦の地上波の視聴率は●●パーセント」
そして、低い視聴率を受けて、野球人気が下がったのか? といった論調になるのがお決まりのパターンとなりつつあるが、CSやBSでの中継が増え、選択の幅が広がったことも地上波の視聴率低下の大きな要因であることは間違いない。
また、全国ネットの地上波の野球中継が終わった後に、中継のスタイルや実況アナウンサーについてファンから厳しい声があがることもある。野球中継を多く流しているCS放送やBS放送に比べ、野球以外の内容も盛り込む地上波の中継スタイルへの不満や実況アナウンサーの情報不足、リサーチ不足が目立つというものだ。
では、アメリカはどうなのだろうか。野球とはあまり関係ないゲストを中継に呼ぶことはない。実況アナウンサーと解説者ふたりによる中継がほとんどだ。アメリカでは、地元向けの放送の実況アナウンサーや解説者は、テレビ局との契約ではなく球団との契約するケースが一般的である。そのため、長期にわたり同一球団の試合を中継する実況アナウンサーも少なくない。
ロサンゼルス・ドジャースの球団専属アナウンサーを務めるビン・スカリー氏は、今年で87歳になるが、来季も実況アナウンサーを務めることが決まった。なんと67年目のシーズンを迎えるという。近年は年齢に配慮し、アウェイゲームへの帯同は西海岸中心となったりしているが、語り口や声の張りは衰えを感じさせない。ほぼすべての年代のドジャースファンは、スカリー氏の声を聴きながら育ったのだ。
野球が文化となっているアメリカならでは
長い間、同一球団の試合を中継することで、そのアナウンサーならでは決まり文句もある。その言葉を耳にして、ファンは試合に入り込んでいく。ラジオやテレビからおなじみの声が流れ、ファンは安心感を覚える。野球が“文化”となっているアメリカならではと言えるだろう。
日本の場合、テレビやラジオ局に所属しているアナウンサーは異動があり、複数の球団の試合を中継することもある。そういった理由からも、長期にわたり同一球団の試合を担当することは難しい。
ただ、近年は一部のCS放送で、同一球団の本拠地でのほとんどの試合を同じアナウンサーがシーズン通して担当するようにもなった。
それでも数年で担当が変わったりすることが多いが、「この球団の試合はこのアナウンサーの声」といったようになる日も近いかもしれない。球場以外で見る野球も、時代とともに変わりつつあるのではないだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)