ILでは首位打者のヘイグ
先日、球団の正式発表を待たずに自ら“フライング発表”をして話題になった阪神の新外国人、マット・ヘイグ。推定年俸は8000万円と、マートンの4億5000万円(2015年推定)に比べると超格安。実力が5分の1以下となれば大問題だが、新外国人はやってみなければ分からないというのが実情だ。しかしメジャー・マイナーでの数字などを基にどれだけの活躍を期待できるのか占ってみた。
まず2015年の成績を振り返ると、メジャーでは今季10試合で12打数3安打(打率.250)という数字が残っている。しかし3Aでは136試合、打率.338、11本塁打、92打点で、インターナショナルリーグ(IL)の首位打者に輝いた。同じ3Aのパシフィックコーストリーグ(PCL)は打者天国として知られ、今季3割打者が16人も出たが、ILは僅か4人。本塁打20本以上もPCLの14人に比べILは3人のみだった。投手優位のILで2位に2分1厘もの差をつけて首位打者に輝いたことは評価すべきだろう。
それではマートンとの差は何だろうか。来日時の実績ではメジャー通算346試合で272安打、打率.286、29本塁打を誇ったマートンが上だ。ヘイグのメジャー通算成績は43試合で19安打、打率.226、本塁打0である。しかしメジャーでの実績と日本で活躍できるかは別物である。
ではアメリカの統計サイトなどで入手可能なデータを中心にマートンとヘイグのメジャー時代の通算成績を比較してみた。まず日本に適応力があるかどうかの指針を示す可能性が高い「ボール球への手出し率(スイング率)」は、マートンが22.8%だったのに対し、ヘイグは29.6%とやや高めだ。変化球への適応力という点ではマートンに劣ると考えた方が良さそうだ。
続いて「スイング時のコンタクト率(バットに当てた確率)」はマートンが81.8%、ヘイグは81.6%とほぼ同じ。ボール球にはやや手を出す傾向はあるものの、ゾーンを問わずミート力はマートンと同等だとみていい。
次は打球の種別を見てみる。ライナー率(LD%)、ゴロ率(GB%)フライ率(FB%)は、マートンが順に16.6%、55.1%、28.3%だった。ヘイグは24.6%、47.7%、27.7%。ヘイグがライナー性の打球を打つ確率はマートンのそれの約1.5倍ということになる。3つの打球性質の中でライナーが最も安打になりやすいと考えられ、広い甲子園球場などでは二塁打の量産が期待できる。狭い神宮球場や東京ドームならそのうちの何本かは本塁打になるだろう。
最後にもう一人比べておきたい選手がいる。今季日本ハムで打率.231ながら34本、97打点と活躍したレアードだ。来日前の2014年にヘイグが今季活躍したILでプレーし、.300、18本、85打点という上々の成績を残した。前半戦は日本の投手に苦しんだが、我慢して起用されつづけると夏場以降は日本ハム打線に不可欠な長距離砲と化した。
来日前のマートンとレアードの数字と比較すると、ヘイグはパワーの面で劣るのは明白だが、中距離打者としてはマートンに匹敵する選手なのかもしれない。首脳陣は、ヘイグが春先に多少の不振にあえいだとしても我慢をして起用すべきだろう。早い段階で日本の野球に適応できれば1年目から打率3割、15本塁打前後は期待できそうだ。