逆方向への本塁打も多かった柳田
山田哲人(ヤクルト)とともに打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーを達成した柳田悠岐(ソフトバンク)。年俸も一気に3倍増の2億7000万円(推定)と、日本を代表する選手となったが、改めて柳田の2015年を数字の面から振り返ってみよう。
まず、シーズン打率.363は歴代19位で、トリプルスリーを達成した選手のなかではトップの打率である。30本塁打以上記録した選手のなかでも7位で、柳田より高い打率を残した選手は、ランディ・バース(阪神)、張本勲(東映)、ロバート・ローズ(横浜)、落合博満(ロッテ)、加藤英司(阪急)、ウォーレン・クロマティ(巨人)と球史に残るスラッガーの名前が並んでいる。
柳田が一発長打だけではなく高打率も残せた要因は、広角に打てたからに他ならない。方向別の安打は、左方向へ26%、センター方向へ39%、右方向へ35%。本塁打の方向を見ても、レフトへ14本、センターへ5本、ライトへ15本と、全本塁打の41.2%を逆方向へ放り込んだ。30本塁打以上打った選手のなかで、逆方向への割合が40%を超えたのは2006年のタイロン・ウッズ(中日)以来だった。
体が壊れてしまうのではと心配になるほどフルスイングをしながらも、柳田はきれいに打ち分けていたのである。広いヤフオクドームの逆方向のスタンドへ文句なしの打球を打てる選手は、今や柳田くらいではないだろうか。
来季は史上初のシーズン300出塁なるか?
柳田は、出塁面でも球史に残る成績を記録した。出塁率.469は、現行の算出法による最高出塁率がタイトルとなった1985年以降で歴代6位。リーグ最多の88四球、リーグ2位の14死球と四死球の合計は102。シーズン180安打以上で100四死球以上は1950年藤村富美男(阪神)、2005年金本知憲(阪神)に次いで3人目のことである。
安打に四死球を加えた出塁数は歴代7位の284。9月26日のロッテ戦でイ・デウンから死球を当てられた影響で、残り8試合は3打席に立っただけだった。ケガをしなければ、歴代トップの王貞治(巨人)が持つ294出塁(1974年)に届いた可能性が高かっただけに悔やまれる。
カウント別成績を見ると、フルカウント時に打率.286を残していることに加え、三振が21個に対し四球を51個も選んでいる。勝負の一球でも確実性を失わず、四球を多く選んだことが見えてくる。
今季は相手のマークが一層厳しくなるだろうが、史上初の2年連続トリプルスリー、そして史上初の40本塁打40盗塁、シーズン300出塁なるかに注目したい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)