秋山に真中...「外野手出身監督」の流れに続け!
2016年のセ・リーグ各球団の監督を見てみると、ひとつの大きな特徴が見て取れる。中日・谷繁元信監督を除く、5球団の監督が全て現役時代に外野手だったということだ。
かつて捕手出身だった野村克也氏は、「外野手の監督は成功しない」と公言していた。しかし、一昨年に日本一となったソフトバンク・秋山幸二前監督の現役時代は外野手で、昨年セ・リーグを制したヤクルト・真中満監督も外野手出身だった。
球界にはびこる“定説”を覆していくという意味でも、興味深い今年のセ・リーグ。そんな中で、静かに闘志を燃やしているのが広島の緒方孝市監督だ。
現役時代はプロ9年目の1995年に盗塁王を獲得するなど、一気にブレーク。元々は走力のある選手であったが、そこに長打力も備わり、1999年にはキャリアハイの36本塁打をマーク。走・攻・守の三拍子揃った外野手として、チームの主軸を任されるまでに成長を遂げた。
現役時代はケガに悩まされることもあったが、その全力プレーはファンの心を魅了した。現役最後の打席でも、三塁打を放った際にヘッドスライディングで三塁へ飛び込み、最後までその姿勢を貫いて現役生活を終えた。
また、その端正なマスクで女性人気も高かった。96年に結婚したかな子夫人は、かつて「学園祭の女王」と呼ばれた人気タレントであり、まさに「美男美女のカップル」と言える。
現役引退直後の2010年からは一軍コーチに就任。「将来の監督候補」として野村謙二郎前監督の下で指導者としての経験を重ねた。そして、2014年のオフ、野村監督の後任として監督となったのだった。
「最大のチャンス」を逃した監督1年目
就任1年目の昨年は黒田博樹の復帰、そして前年から続く「カープ女子」に代表されるカープムーブメントが続いていた。
メジャー行きが噂された前田健太の残留も決まり、多くの野球ファンが「広島は今年が優勝する最大のチャンス」と視線を注いだ。
しかし、相次ぐ野手陣の戦線離脱もあって打線が不調に。前田や黒田が好投するも、なかなか打線が援護できずに敗れるという展開が続く。
最終盤まで阪神とCS争いを繰り広げたが、最終的には田中広輔の「幻の本塁打」の判定に泣くようにして4位。クライマックスシリーズ進出を逃した。
ファンの期待を裏切ってしまった監督1年目。苦しむチーム事情の中、緒方監督は将来の主軸候補を辛抱強く起用し続けた。自らの希望でドラフト1位指名したルーキー・野間峻祥だ。
右と左の違いはあれど、走・攻・守三拍子揃った外野手。かつて緒方監督がつけた背番号37を背負わせたのはその期待の表れだった。
ファンからは野間を重用するあまり「隙あれば野間」という批判もあったが、野間がチームの屋台骨を支える選手に成長した時、緒方監督の決断は評価されるだろう。
今年の広島は前田健太がチームを抜け、昨年よりも苦境となるのは否めない。監督2年目を迎える今シーズンこそ、緒方監督の手腕が問われる。