明るく温厚な「ダジャレ王」?
今季から楽天の監督に就任する梨田昌孝監督。2011年までは日本ハムの監督を努めており、これが5年ぶりの現場復帰となる。
現役時代は近鉄の捕手として活躍。バッターボックスでの独特の構え「こんにゃく打法」で人気を博し、甘いマスクで女性への人気も高かった。
また、2004年までは近鉄の監督を務め、その年限りでチームは消滅。近鉄最後の監督としても有名だ。
今年の8月で63歳。だが、年齢を感じさせない親しみやすい人である。
独特の感性で、ダジャレを連発する球界の「ダジャレ王」。周囲に笑いが絶えないが、「おやじギャグ」と敬遠する若手選手も少なくない。
しかし、梨田監督は「おれのダジャレについてこれる選手は必ず成功する」と断言する。その言葉の裏には、「年上の人を敬う気持ちがない選手は成功などするわけがない…」という、矛盾しているのかしていないのか判断しにくい真理が隠されているのだ。
楽天の新入団選手発表の場でも、得意のダジャレを連発した。
ドラフト1位のオコエ瑠偉には、「まず瑠偉には塁に出てもらいたい」「初対面のときは、一言お声(オコエ)をかけさせて頂きます」といった具合だ。
日本ハムの監督時代には、鶴岡慎也(現ソフトバンク)捕手へ「リードが丹頂(=ツル科の鳥。単調とかけている)になってはダメ」や、「名前は鶴だけど、足は亀。縁起がいい」などと、言いたい放題だった。
あまり知られていない「熱い一面」も…
いつも笑顔で明るいキャラクター、そして温和な顔立ち。だが、その顔の裏には鉄拳制裁も辞さぬ厳しさもあった。
日本ハム監督時代、主力の“M投手”がふがいないピッチングで降板し、ベンチ裏で暴れたことがあった。それを見た梨田監督は、鬼の形相でその投手の胸ぐらをつかみながら怒ったのだとという。
そのシーンを見たチームメートはこう振り返った。「いつもニコニコしている人が怒ると怖いというじゃないですか。まさに、そんな感じなんですよ」。
アメだけではない、ときには強烈なムチも繰り出す。そこに、梨田監督の大きな魅力がある。
楽天監督打診の際、星野仙一副会長からはこんな言葉をかけられた。「もう、お前しかいないだろう」。
ふだんは優しく、時には熱血漢だった星野氏が楽天再建の切り札に指名した男…それが自分と同じタイプの梨田監督だった。
名将と言われる所以
梨田監督が名将と言われる理由がある。
率いた近鉄と日本ハムの両球団でリーグ優勝を達成。長いプロ野球の歴史の中でも、2球団で優勝を飾った監督というのはわずか9人しかいない。
楽天でも優勝すれば3球団目となるが、この快挙は三原脩(巨人、西鉄、大洋)、西本幸雄(大毎、阪急、近鉄)、そして星野仙一(中日、阪神、楽天)の3人しかいないのだ。
その星野氏に再建を託されたとなれば、梨田監督のやる気も高まっているに違いない。
近鉄最後の監督だった2004年、最後は優勝で終われなかった。涙を流す全選手に「お前たち、全員の背番号が近鉄の永久欠番だ」と話したという。
翌年、近鉄とオリックスが合併。新球団の監督は仰木彬監督に決まり、ヘッドコーチ就任の打診もあったというが「みんなの就職先が決まっていないのに、自分だけ決めていいのだろうか」として断ったという逸話も残っている。
熱血漢で、親分肌、それでいてお茶目な性格…。梨田監督の楽天での采配に、ぜひ注目したい。