意外にもこれまで無冠の糸井 念願の初タイトルへ突き進む
俊足巧打に、強肩でも球場を沸かせるオリックスの糸井嘉男。意外にもまだタイトルを獲得したことがないが、今季は初タイトルのチャンスだ。
15日現在、打率.334、26盗塁でいずれもパ・リーグトップの成績を残している。過去、首位打者と盗塁王を同時に獲得した選手は、以下の3人しかいない。
64年 広瀬叔功(南海) 打率.366 72盗塁 12本塁打
95年 イチロー(オリックス)打率.342 49盗塁 25本塁打
これは、三冠王よりも少ない、貴重な記録だ。
開幕からしばらくは3番でのスタメン出場が多かった糸井だが、6月8日の広島戦以降は4番として出場。8月14日からまた3番に戻ったが、多くの試合で4番として出場している。3番で51試合に出場し打率.339、13盗塁。4番で50試合に出場し打率.330、13盗塁。どちらの打順でも高い成績を残している。
過去のプロ野球で、チーム試合数の半分以上で4番を務めた盗塁王は、57年にチーム130試合のうち73試合で4番としてスタメン出場し、40盗塁でタイトルを獲得した飯田徳治(国鉄)だけだ。4番で50試合以上出場の盗塁王も飯田の1度だけ。糸井は、史上2人目、パ・リーグでは初の記録に挑んでいることになる。
また、糸井は日本ハム時代の09年から5年連続で打率3割20盗塁を継続中。今季も達成すれば松井稼頭央(楽天)が西武時代の97~02年に記録したものに並ぶプロ野球タイ記録である。
4番の盗塁王に向けて 課題はビジター球場と対左投手
史上4人目の首位打者と盗塁王の2冠、史上2人目の「4番の盗塁王」に向け、勝負の終盤戦を迎える糸井。初タイトルに向けて壁となりそうなのは、どういった点だろうか。
7月までは月間打率3割以上を残してきたが、8月に入ってから33打数5安打、打率.152。ホームゲームで打率.392(京セラドームでは.388)と好成績を残しているのに対し、ビジターでは.275。特に、西武ドームでは打率.216、QVCマリンフィールドでは打率.200と苦手にしている。
左右投手別成績は、右投手に対し打率.347、左投手に対し.316と左投手に分が悪い。特に、楽天のゴールデンルーキー、松井裕樹に対し6打数1安打3三振と結果を残せていない。右投手にも糸井が苦手にしている投手がいて、ソフトバンクの中田賢一に7打数1安打、打率.143。そして、ロッテの涌井秀章に16打数2安打、打率.125。昨年は8打数1安打、一昨年は5打数1安打と最近3年で29打数4安打と抑え込まれている。オリックスとロッテの対戦はまだ10試合残っており、大きな壁となりそうだ。
18年ぶりのリーグ優勝のためにも糸井の活躍は欠かせない。勝負の終盤戦、糸井のバットと足に注目が集まる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)