シーズン初登板から3試合連続2桁奪三振は史上初の快挙
金本知憲監督が掲げるスローガン“超改革”の下、若手選手の台頭が目立つ阪神。野手では、ルーキーの高山俊や板山祐太郎をはじめ、育成枠から支配下枠に復帰した原口文仁、高卒3年目の横田慎太郎、高卒4年目の北條史也、大卒3年目の陽川尚将らが新しい風を吹き込んでいる。
投手では高卒社会人2年目の横山雄哉や、初登板初先発初勝利を記録したルーキーの青柳晃洋の快投が注目を集めたが、なんと言っても大卒3年目となる岩貞祐太が素晴らしいピッチングを見せている。
2013年ドラフト1位で横浜商科大学から入団した岩貞は、左ひじを痛めるなどケガにも悩まされ、昨季まで通算11試合に登板して2勝5敗、防御率4.50と期待に応えることができずにいた。
今季も、春季キャンプ終盤に左肩の違和感を覚えるなど心配されたが、オープン戦で好投を続け先発6番手の座を確保。シーズン初登板となった4月2日のDeNA戦で、7回を投げ被安打4、12奪三振、無失点のピッチングを見せシーズン初勝利を挙げる。同9日の広島戦では、7回2/3を投げ12奪三振、同16日の中日戦で7回10奪三振と3試合連続2ケタ奪三振を記録。シーズン初登板からの3試合連続2ケタ奪三振は、NPBの左腕投手では史上初めてとなる快挙だった。
プロ入り後初対戦となった5月27日の巨人戦では、1対0のスコアでプロ初完投初完封勝利を収めた。これもまた、巨人戦に初めて登板した投手として球団史上初の快挙だった。
疲れは大丈夫!? 5月以降は奪三振率が急落……
6月5日現在、岩貞は10試合に登板し4勝3敗、セ・リーグ3位の防御率2.01という数字を残している。67回を投げ74奪三振、奪三振率9.94はともにリーグ2位の好成績だ。
この数字だけを見ると、「完全にローテーション投手の座を射止めた」と言い切りたいところだが、開幕から一軍の先発ローテーションで投げるのは初めてということもあり、明らかに疲れが見えはじめている。
4月末までは、5試合で34回1/3を投げ三振を46個奪い奪三振率は12.06。だが、5月以降は5試合で32回2/3を投げ、奪った三振は28個で奪三振率が7.71まで下がっている。また、4月末までの5試合はすべて6イニング以上を投げていたが、5月以降は5試合中2試合が6イニング未満での降板となった。6月3日の西武戦では6回途中9失点と大きく崩れるなど、好不調の差が激しくなっているのも気になる。
開幕当初は空振りをとれていた速球も最近はバットに当てられる回数が増え、スライダーやチェンジアップといった変化球が浮いてしまう場面も多くなってきた。エースと言われるためには、シーズンを通してコンスタントに結果を出し続けることが重要なのは言うまでもない。
3試合連続2ケタ奪三振という記録は、単なる偶然では達成できない。ありあまる素質を、これからどれだけ生かせるか。プロの世界で、これまで感じたことのない疲労とうまく付き合いながら、快刀乱麻のピッチングを見せてほしい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)