投打の柱を失いもろくも崩壊 楽天が目指すべき道とは?
昨年、球団創設9年目にして日本一に上り詰めた楽天。
悲願達成から一転、節目の10年目は、5位の西武に4ゲーム差(8月24日終了時点)をつけられ最下位に沈んでいる。球団設立当初から、大掛かりなシステム導入によりチーム編成に力を注ぎ、派手さこそないものの確かな力を蓄えてきたかに見えたが、そのチーム力は意外なほどもろいものであった。
そもそも今季開幕前から苦戦は予想されていた。24勝無敗という球界の金字塔を打ち立てた田中将大、チームトップの28本塁打を放ったケーシー・マギーと、投打の柱がそろって退団したのだから無理もない。とはいえ、ここまでの凋落を誰が予想し得ただろうか。
「投打の柱」とは野球における常套句だが、それが必要であることが長い野球の歴史で証明されているからこそ常套句になり得たわけである。投打の柱を欠いた楽天には、なんらかの手だてを打つ必要があったのだ。
則本、松井のダブルエースに嶋 守りのチームに生まれ変わるべし
もちろん、楽天とて無策で今季に臨んだわけではない。マギーの後釜にと、メジャーでの実績も十分のケビン・ユーキリスを獲得。しかし、開幕1ヵ月で左足を傷めると早々に帰国。その後、ジョン・ボウカー、ザック・ラッツ、ニック・エバンスと立て続けに外国人野手を獲得するもいずれも不発に終わった。そもそも、マギーのような大車輪の活躍ができる選手はそうそう発掘できるわけもない。
であるならば、2年目の則本昂大、ルーキー・松井裕樹を左右のダブルエースとして育て、チームの顔である嶋基宏を中心とした守りのチーム作りをまずは目指すべきではないだろうか。“まずは守り”からが、野球の鉄則である。
しかし、このところの楽天には不可解な選手起用が見られる。嶋に代わり、小関翔太がスタメンマスクをかぶることが増えているのである。8月に入ってからは、小関の10試合に対し、嶋の先発出場は6試合にとどまっている。嶋は昨季オフに4年契約を結んだばかり。チームの中心に据えるという球団の意思表示が揺らいでいるように感じる。
もちろん、CS出場が現実的ではない今、嶋に代わる2番手捕手を育てるための積極起用と考えてよいのだろう。しかし、8月16日のロッテ戦では、サインミスからか、後逸で致命的な失点を許すなど、リード面も含めまだまだ小関には課題が山積しているという見方も多数ある。
また、8月22日のオリックス戦では、レフトに起用した松井稼頭央の怠慢プレーによりウィリー・モー・ペーニャにタッチアップで二塁を陥れられ、結果的にその後の3失点につながった。松井稼頭央といえども、本職ではない外野では並の選手か、それ以下でしかない。将来を嘱望される大型遊撃手・西田哲朗の台頭がその起用を招いたこともまた皮肉な結果である。
もちろん、現戦力で勝ち星を必死に拾おうとする首脳陣やフロントの考えは痛いほど伝わってくる。ただ、なんともちぐはぐな選手起用に思えてならない。チームが瓦解してしまった今こそ、来季以降を見据えた再建の指針をはっきりと示すべきときではないだろうか。
今週はコボスタ宮城で6試合が組まれている。本拠地のファンに、楽天が目指す新たな野球、その方向性だけでも見せてほしいと願う。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)