フレッシュオールスターで見せたスター性
やはりこの男、ただ者ではない――。
7月14日に行われたフレッシュオールスターゲームで、楽天のオコエ瑠偉が暴れ回った。
先頭打者で打席に入った初回。同学年で親交が深いソフトバンク・高橋純平の145キロ直球を完璧にとらえた打球は、センターオーバーの二塁打に。二死となった後、巨人・岡本和真の打席では三盗も決め、試合開始早々からファンを沸かせてみせた。
さらに2回二死一、三塁の場面ではセンター前へタイムリーを放つなど、出場選手中で唯一の猛打賞となる5打数3安打で1打点を記録。新たな“お祭り男”の誕生を予感させた。
小さい頃から大舞台には強かった
少年時代から大舞台に強いはタイプだった。オコエは東京都東村山市の出身。小学校時代は東村山ドリームに所属し、6年時には3番・捕手で出場した都大会で優勝。中学時代の東村山シニアを経て、名門・関東第一高に入学する。
2年春の都大会、4回戦で初のスタメン出場を果たすと、いきなり高校1号となる初回先頭打者本塁打。このように、とにかくド派手な活躍が目立つ。
昨夏の甲子園での暴れっぷりは、記憶に新しいところだろう。初戦の高岡商業高戦では、49年ぶり2人目の記録となる1イニング2本の三塁打を放ったかと思えば、続く中京大中京高戦では初回二死満塁のピンチで頭上を越えそうな大飛球を背走しながらスーパーキャッチ。チームの窮地を救ってみせる。
さらに準々決勝の興南高戦では、同点で迎えた9回二死二塁の場面でレフトスタンドへの決勝2ランを放ち、興奮のあまり豪快なバット投げを披露。準決勝では小笠原慎之介(現中日)、吉田凌(現オリックス)率いる東海大相模高に敗れたものの、走攻守すべてに強烈な印象を残した。
打撃は課題山積も守備で見せる大器の片鱗
そんな“野球センスの塊”のような男も、プロの世界では大きな壁にぶつかっている。
ここまで一軍では43試合に出場し、打率.183、1本塁打、6打点と低迷。持ち味である足でも、4盗塁を決める一方で3つの盗塁死を記録するなど、課題は次々に見つかっている。
「ファームでより多くの出場機会を与え、育成したほうがいい」。そんな意見もある。ただし、フレッシュオールスターゲームでの活躍で示した通り、オコエは“二軍以上、一軍未満”といった立ち位置にある。
打撃には課題が山積しているものの、守備では80度の守備機会でなんと無失策。それも持ち前の俊足・強肩を活かすプレーを随所に発揮しており、やはり並の選手ではないところを見せつけている。それならば、育成をするにしても、よりハイレベルな一軍の試合でできればそれに越したことはないはずだ。
オコエは将来の球界を背負っていく選手のひとりと見て間違いない。そんな逸材を、育成手腕に定評がある梨田昌孝監督がいかに使い、スケールアップさせていくのか。後半戦の楽天を見ていくうえで、大きな楽しみとなりそうだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)