球界随一のイケメン捕手は「がばい旋風」に飲まれていた!
5月までは3位に甘んじることすらあったものの、6月初旬から首位をキープしている巨人。とはいえ、2位の阪神とは僅差。3位の広島、4位の中日の追い上げも気になって、ファンとしては落ち着かない日々が続いている。
頭ひとつ抜け出したい状況で存在感を放っているのが、ルーキーの小林誠司だ。178センチ74キロという細身のキャッチャー。TBSドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』では、檀れい演じる野球好きの社長秘書が「イケメンなんですよ!」と推したほどのルックスで、「イケメン捕手(キャッチャー)」で検索をかけてみると、小林の写真や記事が大量にヒットする。
小林誠司は1989年6月生まれの25歳。大阪府堺市出身で、小学生の頃はソフトボールをやっていたという。中学時代は、硬式クラブ「大阪泉北ボーイズ」に所属。5学年下には藤浪晋太郎(現・阪神)もいたチームだ。
中学卒業後は、広島の広陵高校へ。投手兼遊撃手として入部したが、1年秋の大会後、中井哲之監督に「キャッチャーをやってみろ」とコンバートを指示されたという。
バッテリーを組むことになったのが、同学年の野村祐輔(現・広島)。監督としては「試しにやってみろ」という気持ちだったそうだが、真面目な小林はキャッチング練習など真剣に取り組み、野村好みの捕手になるための努力も重ねた。ただ、注目選手として取り上げられるのは、野村と土生翔平(現・広島)ばかり。「捕手・小林誠司」の名前は、まだ世に出ていなかった。
3年生となった2007年、春と夏の甲子園出場。春は、初戦で唐川侑己(現・ロッテ)がエースの成田高校を延長戦で下し、準々決勝で中村晃(現・ソフトバンク)がいた帝京高校に敗れた。夏は、準決勝でセンバツ優勝の常葉菊川高校を倒すなど、強さを見せつけ決勝進出。相手は「がばい旋風」の佐賀北高校。野球ファンにはあまりにも有名な、佐賀北高の大逆転劇。8回裏、ストライクが取れず戸惑いの表情を浮かべる広陵高のエース・野村の球を受け続けていたのが小林だった。
「ポスト・慎之助」の強肩&好リードに注目!
高校野球を甲子園準優勝で終えると、関西の古豪・同志社大学へ。1年春から正捕手となり、4年時は主将。遠投115メートル、二塁への送球タイムが2秒を切る強肩、巧みなリードで注目を集めた。大学選手権には3年、4年と出場し、3年時は菅野智之(現・巨人)がいた東海大学に敗れてベスト8。4年時は九州共立大学のエース・大瀬良大地(現・広島)に完封を食らい、2回戦敗退だった。
それでも、3年春から4年秋まで4季連続リーグ優勝。ベストナイン3回、MVP1回という堂々たる成績。4年秋には、「社会人を考えていましたが、1位の評価がいただけるのであれば、自信を持ってプロの世界に飛び込みたい」と発言。「1位以外ならプロへ行かない宣言!」などと報道されたが、本心は「自分に自信がなかった」と後に明かしている。
ドラフト指名されることなく入社した日本生命でも、1年目から正捕手の座を獲得。1年目、2年目ともに、都市対抗と日本選手権という二大大会でプレーした。社会人ナンバーワン捕手と評され、巨人スカウト陣は「肩を含めた守りは、ドラフト候補の中でトップクラス。大学時代より打撃もよくなった」とコメント。原辰徳監督の「慎之助(阿部)の後の捕手も補強ポイント」という意向もあり、2013年秋、巨人から念願のドラフト1位指名を受けた。直後の記者会見では、「まずはジャイアンツに感謝しています。指名されて光栄です。とても嬉しい気持ちと、1位指名には正直びっくりしています」とコメント。晴れ晴れとした笑顔を見せた。
今春キャンプから1軍に帯同し、開幕も1軍。「4番、ファースト、阿部」が多くなってきた8月からは、スタメンでマスクをかぶる機会も増えてきた。とはいえ、強打を誇る阿部とはタイプが違う。小林の売りはあくまでも守備力だ。8月5日のDeNA戦では、3回から阿部に代わってマスクをかぶると7人もの投手をリード。首脳陣から高評価を得た。
球界を代表する強打者・阿部慎之助が守ってきた巨人のホームベース。世代交代と決めつけるのはまだ早いが、新しい力が台頭してきたのは間違いない。細身の体にプロテクターをまとい、甘い顔立ちをマスクで隠したとき。捕手・小林誠司が最も輝く時間を堪能したい。
文=平田美穂(ひらた・みほ)