打撃好調が続くベテランたち
セ界のおじさんたちが元気だ。30代中盤から後半の彼らは一般的な会社員なら働き盛りの年齢だが、平均引退年齢29歳のプロ野球界では立派なベテランプレイヤーである。あの王貞治は37歳のシーズンに50本塁打を記録し、メジャーリーグでは42歳イチローの通算3000安打が話題となっている。そして現在の日本球界でも、いまだクリーンナップを打つ現役バリバリのアラフォースラッガーたちが大活躍。今回は真夏のセ・リーグを盛り上げる彼らの打撃成績を見てみよう。
新井貴浩(広島/39歳/77年1月30日生)
福留孝介(阪神/39歳/77年4月26日生)
89試合 打率.325 5本 38打点 OPS.852
阿部慎之助(巨人/37歳/79年3月20日生)
45試合 打率.311 7本 30打点 OPS.863
村田修一(巨人/35歳/80年12月28日生)
95試合 打率.308 12本 35打点 OPS.840
首位を走る広島の中軸として存在感を発揮するのが、驚異の得点圏打率.396を誇る新井貴浩だ。4月26日に通算2000安打を達成した39歳は阪神時代の14年シーズンに94試合、打率.244、3本塁打という成績に終わり、出場機会を求めて昨季8年ぶりに古巣復帰。するとチーム最多の78試合で4番を任され見事復活を遂げた。今季はここまでリーグ3位の73打点をマークしているが、トップの山田哲人(ヤクルト)とはわずか4打点差。チームの25年ぶりの優勝と同時にリーグ史上最年長の打点王獲得にも期待が懸かる。
この新井と同じく39歳の福留孝介(阪神)は7月30日の古巣中日戦でサイクルヒットを達成。中日時代の03年6月に続いて自身2度目、39歳3カ月の記録達成は36歳6カ月の山本浩二(元広島)を抜いて史上最年長となった。MLBから日本復帰した13年は打率.198と極度の打撃不振で引退まで囁かれたが、昨季は9年ぶりのベストナインとゴールデングラブ賞を獲得。四十路を前に完全復活し、今季は首位打者を獲得した06年以来となる自身10年ぶりの打率3割到達が現実味を帯びてきている。
そして7月を14勝7敗で乗り切った巨人の原動力も2人のベテラン選手だ。4番に復帰した阿部慎之助と開幕からフル出場を続ける村田修一。前半戦は右肩痛で出遅れた阿部も5月末に戦列復帰すると、得点圏打率.367とさすがの勝負強さを発揮し、7月24日のDeNA戦から「4番ファースト」で再スタート。通算1865安打、368本塁打を誇る37歳の元キャプテンに広島追撃を託すことになった。
この阿部とクリーンナップを組むのが松坂世代の数少ない生き残り村田修一だ。開幕からフル出場を続け、昨季の打率.236から3割台へと確実性アップ。3年契約の最終年だが、来季以降もまだしばらく巨人のサードは村田が死守しそうである。
新井、福留、阿部、村田・・・アラフォースラッガーの彼らに共通するのはこれまで何度もマスコミやファンから「もう終わった」と言われてきたことだろう。それぞれ30代中盤で一度大きく成績を落とすも、選手生命ギリギリのところで踏ん張って打撃スタイルを変え生き延びた。
終わらない男たちの熱い夏はまだ始まったばかりだ。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)