子どもたちの“憧れ”
多くのチームスポーツには、“花形”と呼ばれるポジションが存在する。
チームの戦術や性質などによって違いはあれど、アメリカンフットボールならば「クォーターバック」、サッカーなら「トップ下」が“花形ポジション”と呼ばれることが多い。
ON時代を知る人ならば、「ホットコーナー」とも呼ばれる三塁手と考える割合が多いのではないだろうか。
当時の日本の子どもたちは誰もが「4番・三塁」に憧れたという。長嶋茂雄以降も原辰徳や掛布雅之がやはり強打の三塁手として全国区の人気を誇った。
また、平成に入ってからは外野手にスポットが当たることが増えた。イチローや松井秀喜といった日本人メジャーリーガーの活躍により、「左打ちの外野手」に憧れる少年が急増したともいわれている。
メジャーリーグでは新たな流れが...?
さて、メジャーリーグで花形ポジションといえば、「遊撃手」を指すことが多い。
1990年代から2000年代にかけてアレックス・ロドリゲスやデレク・ジーター、ノマー・ガルシアパーラといった大型遊撃手が台頭。攻守でチームを引っ張る選手が多かった。
その後もトロイ・トロウィツキーやホセ・レイエスといった身体能力の高い選手が次々と登場。打てて守れる遊撃手の存在は、強豪チームに必要不可欠な存在となった。
しかし、今季のメジャーリーグはというと、二塁手の活躍が目立っている。
現在ア・ナ両リーグの打率ランキングを見ると、ア・リーグはホセ・アルテューベ(アストロズ)が.340でトップ。さらにダスティン・ペドロイア(レッドソックス)が.332で2位と、トップ2を二塁手が占めているのだ。
そしてナ・リーグの方も、トップはダニエル・マーフィー(ナショナルズ)で.347、それに続く2位が.344のDJ・ルメーヒュー(ロッキーズ、)と、こちらも上位2位が二塁手。なんと両リーグで同じような現象が起こっているのだ。
また、打率だけには留まらない。ツインズのブライアン・ドジャーはここまで40本塁打を記録。トップを1本差で追っており、二塁手としては1990年のライン・サンドバーグ以来、26年ぶりの本塁打王を狙う。
このように、今季は二塁手の活躍が光っているものの、遊撃手も負けてはいない。
ナ・リーグでは、コーリー・シーガー(ドジャース)とトレバー・ストーリー(ロッキーズ)という2人の遊撃手がハイレベルな新人王レースを展開中。さらに2015年のドラフトでは遊撃手が上位3位までを占めるなど、若手の有望株に限れば遊撃手の方が質・量ともに充実している。
捕手と並び、守備の負担が大きいとされる遊撃手と二塁手。必然的に身体能力が高い選手が務めることが多くなる。
今後、どちらのポジションにより多くのスター選手が生まれるのか...。“花形”を巡る争いに要注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)