好調チームを牽引
ア・リーグ東地区でヤンキースと激しい首位争いを展開するレッドソックス。チームは現地24日のレイズ戦に敗れたが、今季成績は34勝16敗で勝率.680はメジャートップだ。
レッドソックスのチーム打率はメジャートップの.266。そして1試合平均得点(5.3)は、ヤンキースに次ぐ2位。チーム防御率がメジャー9位であることから、打撃のチームと言っていいだろう。そのレッドソックス打線を引っ張る一人が1番を打つムーキー・ベッツだ。
現在25歳のベッツは、身長175センチ・体重79キロとメジャーではかなり小柄な部類に入る。しかし、メジャーでも屈指のスピードとパワーのコンビネーションを誇る身体能力に優れた外野手として知られる。
メジャーデビューは2014年。マイナー時代は主に二塁手として出場していたが、同ポジションにはチームの顔ともいえるダスティン・ペドロイアがいたため、14年に外野に転向。これが功を奏したのか、メジャー昇格後はすぐに外野のレギュラーに定着した。
3年目の16年にオールスターに選出されると、3割・30本・100打点を軽くクリア。ゴールドグラブ賞とシルバースラッガー賞も受賞し、MVP投票ではマイク・トラウト(エンゼルス)に次ぐ僅差の2位につけ、チームを代表する選手に成長した。しかし、昨年は一転、ほとんどの打撃部門で数字を落とすなど苦しいシーズンを送った。それでも、MVP投票では6位(チーム内では1位)と、いまやレッドソックスの顔となっている。
そして迎えた今季は、開幕から絶好調だ。打率.362、16本塁打、49得点、19二塁打は全てア・リーグだけでなく、メジャー全体でも1位。さらにOPS1.188も2位・トラウトの1.071を大きく上回る。1番打者ということで、打点こそ39でトップから9点差の同9位タイ(ア・リーグでは7位タイ)だが、今後打順が変わるようなことがあれば三冠王も狙えるかもしれない。
さらに、今季のベッツは出塁率が高く、走る機会も多い。盗塁数12個はア・リーグ2位タイ。現在リーグトップのディー・ゴードン(マリナーズ)は、16盗塁をマークしているが、右足親指の骨折で故障者リスト入りしてしまったため、ベッツはこの部門でもトップを狙えるだろう。
もし本塁打王と盗塁王に同じシーズンに輝けば、メジャー史上4人目。過去にはタイ・カッブやチャック・クラインらが達成している。最後の達成は1932年のクライン。86年ぶりの快挙も視界に入る。
幾つもの“記録”にも期待がかかるベッツ。恐怖の1番打者としてレッドソックス打線を牽引する核弾頭から目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)