ニュース 2023.12.20. 10:00

ロッテ・荻野貴司「これが今の僕の実力」故障離脱などもあり悔しいシーズンに

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ロッテ・荻野貴司 (C) Kyodo News
 ロッテの荻野貴司は、今季2度の故障離脱などがあり、50試合の出場にとどまった。

 今季に向けて「全員ライバルなので、自分の体調を整えてしっかり自分の力を出せるように準備したい」と意気込み、3月4日に一軍合流し、同日のヤクルトとのオープン戦に『1番・センター』でスタメン出場。昨季はレフトをメインに守っていたが、オープン戦ではレフトで4試合、センターで1試合、ライトで10試合と外野の全ポジションで出場した。打撃でもオープン戦初安打まで12打席かかったが、オープン戦初安打を放った3月8日の日本ハム戦から5試合連続安打、3月22日の広島戦からオープン戦最終戦となった3月26日の中日戦まで4試合連続安打と、オープン戦の打率.302と開幕に向けて良い形で終えた。

 昨季は出遅れた影響で初出場が5月27日だったが、今季は開幕からマリーンズの1番打者に荻野貴司がおり、これほど心強いことはなかった。開幕からトップバッターとして打線を牽引。開幕2戦目の4月1日のソフトバンク戦で今季初安打をすると、4月4日の日本ハム戦で今季初のマルチ安打。4月6日の日本ハム戦でも第1打席にレフト前に運ぶと、2-0の6回一死一塁からレフトオーバーの当たりを放ったが、一塁ベースを回ったところで右太ももを触るそぶりを見せ、二塁到達後に角中勝也に代走が送られた。球団は翌7日に、千葉県内の病院で『右大腿二頭筋肉離れ』と診断されたことを発表。

 レギュラーの一角として、シーズン通しての活躍が期待された中で、チームにとっても荻野にとっても痛い離脱になった。荻野が故障で離脱している間、若手選手たちが一軍で居場所を掴もうと必死にアピールした。荻野の離脱で代わって昇格した平沢大河が4月8日の楽天戦で1点を追う8回に決勝2ランを放てば、藤原恭大は春先に一時リーグトップの打率、安打数をマーク。昨季までは代走での出場がメインだった和田康士朗も5月2日に今季初昇格を果たすと、スタメン出場した5月3日と4日の楽天戦で安打を放った。

 荻野はリハビリの期間中、若手選手たちが躍動していたことについて「刺激になっていました」と振り返る。荻野自身は復帰してから若手選手たちを引っ張っていくぞという考えを持っていたのだろうかーー。「いやいや、そんな引っ張れるタイプでもないので、若手にしっかりついてやっていきたいと思います」。

 7月13日のヤクルト二軍戦で実戦復帰を果たすと、いきなり2安打。16日の西武二軍戦では宮川哲の初球インコース高めのストレートをくるっと回ってレフト線に安打を放つと、左利きのレフト・ペイトンが反転している間に二塁を陥れる好走塁。打って、走って、荻野らしさが光った。

 オールスター明けの7月25日に一軍復帰。「ちょっとまだなんか状態がなかなか上がってこないですね。これが今の実力です」。一軍に復帰してからの最初の10試合は、打率.179(39-7)、5打点と、なかなか快音が響かなかった。「ちょっと体が突っ込んでバットが出てきていないところがあるので、そこを調整しながらやっています」と試行錯誤。

 8月5日の楽天戦、1-1の2回一死三塁の第1打席、辛島航が1ストライクから投じた2球目のインコース高めのストレートをくるっと回転してレフト前適時打。荻野らしい安打にも本人は「いや〜まだまだだと思います」とし、「波もありますし、安定して塁になかなか出られていないので、これからの課題だと思います」とポツリ。

 それでも、8月5日の楽天戦以降は、8月の打率.352(54-19)、9打点、8月20日の楽天戦で4安打、複数安打も6回マークし復調の気配を見せた。

 その一方で、気になったのは盗塁数。8月10日のオリックス戦でマークした1つのみ。「機会があれば走りたいですけど、試合の流れとか状況を見ながらというところですね」と話し、「次を狙う意識を常に持っていますけど、自分の今の走力を考えながら、昔は行けたけど、今は行けないというのはあると思うので、そこを判断しながらやっています」と明かした。

 8月23日のソフトバンク戦、1-3の4回一死走者なしの第3打席、センター前に安打を放つも代走が送られ途中交代し、翌日千葉県内の病院で『左ハムストリング軽度の肉離れ』と診断された。8月に入りチーム状況が停滞する中で、再び荻野の離脱。荻野の調子が上向いてきただけに、かなり痛かった。

 復帰は早かった。9月3日のヤクルト二軍戦で実戦復帰すると、9月5日のソフトバンク戦から一軍復帰。9月12日の楽天戦では1-3の7回二死一、三塁の第4打席、則本昂大が投じた初球の141キロフォークをレフトラグーン席へ決勝の第1号逆転3ラン。

 ただ、復帰してからの打率は.195(77-15)。ここ数年、試合前練習では、打撃練習でバットを長く持って打つことは減っていたが、9月24日のソフトバンク戦の試合前練習では左の打撃投手の時にバットを長く持って打撃練習をし、10月2日の西武戦の試合前練習では右の打撃投手の時にもバットを長く持って打撃練習。10月12日のZOZOマリンスタジアム練習でも左の打撃投手の時にバットを長く持って打撃練習を行っていた。

 その理由について荻野は「ちょっと動きが小さくなっている時があったので、大きく使ってみようかなというのがありながら、はい」と、状態を上げるために色々と試していた。また9月13日の楽天戦の試合前打撃練習では、自分の打撃練習の順番が来るまで打撃フォームのチェックをしたり、左の打撃投手との打撃練習が終わった後に、自分のスイングに納得いかなかったのか、首を捻っていたこともあった。

 「怪我もありましたし、なかなか思うように結果が出ない時もありましたけど、これが今の僕の実力かなと思ってやっています」。課題を克服するために「常に自分の技術を上げようという練習というんですか、継続してやっています」と技術向上に励んだ。

 不本意なシーズンに終わった中で、10月14日のソフトバンクとの「2023 パーソルクライマックスシリーズ パ」のファーストステージ第1戦(ZOZOマリン)に『1番・右翼』で先発出場し、「思いきっていこうと思っていたので、ストライクは全部いこうと思っていました」と、ソフトバンク先発・スチュワートが1ボールから投じた2球目の150キロストレートをレフトスタンドに飛び込む先頭打者本塁打。

 荻野はシーズン終盤の取材で、「1番を打たせてもらえることが多いのでしっかり、チームに勢いをつける打撃ができるようにやっていきたいと思います」と話していたが、その言葉通り、トップバッターとしてチームに勢いを与える働き。この本塁打をきっかけに打線は、9安打8得点を奪い、3位・ソフトバンクに8-2と大勝。

 守っても10月16日のソフトバンクとのCSファーストステージ第3戦、0-0の6回一死二塁から近藤のライト前安打をライト・荻野がホームを狙った二塁走者・柳田をワンバウンド送球で刺した。

 CSでは随所で良い働きを見せたが、シーズンを振り返ると、2年連続で100試合出場に届かず、今季はプロ入りから13年続いていた二桁盗塁の達成は叶わなかった。まだまだ打って、走って、守る、荻野貴司を見たいファンは多いはず。来季はその期待に応えるシーズンにしたい。

取材・文=岩下雄太

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