ニュース 2019.06.18. 17:13

「将来」にフォーカスするドミニカ、「今」にフォーカスする日本(前編)


■何に「フォーカスするのか」が違う


ドミニカ共和国の教育水準はそれほど高くはありません。学校の授業のレベルは日本の方が上です。教育水準は間違いなく日本のほうが高いでしょう。でも、何に「フォーカスするのか」が違うんです。
ドミニカ共和国では「将来」にフォーカスしている。でも、今の日本は「今」にフォーカスしてしまう。
これは野球だけではありません。本来、教育とは「将来豊かに生きていくために、今、こういう勉強や経験をすべきじゃないか。100点取らなくてもいいけど、知っておくほうがいいね」ということを学ぶことではないかと思います。

日本では、本来「手段」であるべき「教育」を「いい点を取る」という「目的」にしてしまうことで、本質を見失ってしまう恐れがあると思います。
野球で言えば、みんなプロ野球選手になれるわけではありません。みんな野球で生きていくわけでもありません。でも、野球を始めたからには少しでもうまくなりたい、長く現役を続けたいと思っている。そして野球をしたことを人生に役立てたいと思っている。
今の高校以下の野球が、そういう目的に合っているかどうかですね。
ドミニカ共和国からは、日本よりもはるかに多くのメジャーリーガーが生まれています。だから、子供のころからメジャーを目指すのは当たり前だと思うかもしれません。

でも、決してそうではありません。メジャーリーガーになれるのはドミニカ共和国でもほんの一握りです。
でもドミニカ共和国では子供も指導者も「メジャーになんかほとんど行けないのだから、俺らはここで燃え尽きてもいい」とは思っていません。そもそも「燃え尽きたい」と思える甲子園のような大きな大会がありません。仮に燃え尽きても誰も評価してくれません。
大人たちも子供たちに何をさせるべきかを、フォーカスを「将来」に向けて当てて考えています。それはメジャーリーガーになれなくても、子供の将来にプラスになるはずです。(取材・写真:広尾晃)

後編に続きます。




阪長友仁氏
新潟明訓高校時代に甲子園に出場、本塁打も記録している。立教大学硬式野球部では主将も務める。その後、一般企業勤務を経て、世界の野球の現場をつぶさに見て、学び、指導者としての見聞を広める。現在は堺ビッグボーイズのコーチとして野球少年を指導。特にドミニカ共和国の野球指導の優秀さを日本に紹介している。

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