昨季の被本塁打を早くも超えた田中
ニューヨーク・ヤンキースの田中将大は、途中戦列を離れたこともあったが、ここまで17試合に登板し9勝5敗、防御率3.56とまずまずの成績を残している。
被打率は昨季の.240から.219に下がり、1イニングあたりに許した走者を示すWHIPも1.06から1.01と良くなっているが、防御率が下がってしまっている理由のひとつは被本塁打の増加だろう。
昨季は136回1/3を投げ、被本塁打が15本だったが、今季は108回2/3を投げ18被本塁打とすでに昨季の本数を超えている。9イニングあたりでは昨季の0.99本から今季は1.49本とかなり増えてしまっている。日本での成績を含めても18被本塁打は、プロのキャリアで最多だ。また、本拠地ヤンキースタジアムで61回1/3を投げ14被本塁打、デーゲームで57回2/3を投げ12被本塁打と苦手な部分がはっきりしているのも気になるポイントだ。
今季、田中が打たれた本塁打のうち初球を打たれたのが3本。ボール先行のカウントで打たれたのが9本。18被本塁打のうち12本が初球かボール先行のカウントで打たれたものだ。日本のプロ野球中継などで「外国人打者相手に初球やボール先行では慎重に入ること」とよく言われる。当たり前の話だが、メジャーでは日本人野手以外はすべての打者が外国人選手なわけで、より慎重にピッチングをする必要がある。
打たれた球種は、18本中13本がツーシームを含む速球系。そのうち8本がインコースかアウトコースを狙った球が真ん中に入って痛打されたものだ。それ以外にも曲がりきらなかったスライダーや高めに浮いた球を打たれていて、田中が捕手の要求通りに投げたのにも関わらず、相手打者のうまさが勝った本塁打は1本だけである。
メジャーで打たれた本塁打のうち3ラン以上は1本だけ
甘い球を逃さないメジャーのすごさを見せつけられているが、田中のすごさを感じる部分もある。田中が打たれた18本塁打のうちソロ本塁打が13本、2ランが5本と走者を置いて打たれた本塁打が少ないのだ。メジャーデビューからこれまで33本の本塁打を打たれているが、3ランは昨季の4月9日にボルティモア・オリオールズのジョナサン・スクープに打たれた1本だけ。満塁ホームランは1本も打たれていない。本塁打は打たれるものの、田中はその被害を最小限に食い止めていると見ることができる。
後半戦に入った頃、ヤンキースは2位に5ゲーム差以上つけて独走状態に入るかと思われたが、トロント・ブルージェイズが猛追。ヤンキースは11日から16連戦の真っただ中で、今季の54日間で51試合を戦う過密日程となっている。そのため、これまでは中5日での登板が多かった田中だが、終盤戦にかけて中4日での登板が増える可能性もある。疲労もたまっているだろうが、勝敗の行方を一球で左右してしまう被本塁打をどれだけ減らせるか。昨季はかなわなかったプレーオフ進出に向けて、田中の奮投は続く。
文=京都純典(みやこ・すみのり)