米野球殿堂入りが発表
2019年の米野球殿堂入り4名が発表された。通算652セーブのマリアノ・リベラが史上初の満票で選出。他に資格最終年(10年目)のエドガー・マルティネス、資格1年目のロイ・ハラデー(故人)、資格6年目のマイク・ムシーナの合計4氏が晴れて殿堂入りを果たした。
4人の中で最も“地味”な存在といえるのがムシーナだろう。オリオールズとヤンキースの2球団で18シーズンにわたってプレーし、通算270勝(153敗)を挙げたが、防御率は3.68とやや高め。ステロイド時代に、打者有利な球場を本拠地として投げていたためだが、多くの勝利をチームにもたらしたという点では殿堂入りに相応しい投手だったと言えるだろう。
ムシーナがデビューしたのは1991年。その年は、12試合に登板し4勝を挙げると、翌1992年から17シーズン連続で2桁勝利をマークした。1995年には19勝でア・リーグ最多勝に輝いた。また、ゴールドグラブ賞を7度獲得するなど、その守備力は高く評価されていた。39歳で迎えた2008年に自身初の20勝を挙げるも、その年限りで引退。あと2~3年現役を続けていれば300勝も十分狙えただろう。ちなみにシーズン20勝を達成した年に引退したのはサンディー・コーファックス以来、42年ぶりの出来事だった。
通算4度の“あとひとり”
一方でその現役時代は不運な面もあった。ヤンキースで過ごした2001年から08年は「コアフォー(ジーター、リベラ、ペティット、ポサダ)」とともにプレーしながら(※ペティットは2004年から06年までアストロズでプレー)、2度出場したワールドシリーズではいずれも敗れ、結局世界一はかなわなかった。ヤンキースは、ムシーナ加入前年の2000年と引退翌年の2009年に世界一に輝いただけに、ムシーナにとっては運がなかったとしか言いようがない。
不運と言えば“ノーヒッター”、“完全試合”を目前で逃したことも何度かあった。オリオールズ時代の1997年、インディアンス戦で9回一死まで1人の走者も許さなかったが、あと2人の場面で安打を打たれ、快挙を逃した。さらにヤンキース移籍1年目の2001年には9回2死2ストライクから安打を許し、再び目前で完全試合を逃した。ムシーナは、この2試合を含め通算4度の「ワンヒッター」を記録した。
同じ時期に活躍したペドロ・マルティネス、ランディー・ジョンソン、そしてマイク・マダックス(いずれも資格1年目に殿堂入り)などに比べると印象としては地味だったが、投手としての総合力では彼らとの間にそこまで大きな差はなかったと思う。不運とも悲運ともいえる現役生活だったかもしれないが、資格6年目の殿堂入りには大きな拍手を送りたい。
殿堂入り4名の主な成績
▼ マイク・ムシーナ(18年間)
・537試合(3562.2回)
・270勝153敗0セーブ
・防御率3.68
▼ マリアノ・リベラ(19年間)
・1115試合(1283.2回)
・82勝60敗652セーブ
・防御率2.21
▼ エドガー・マルティネス(18年間)
・2055試合(7213打数2247安打)
・打率.312/309本塁打/1261打点
・OPS.933(出塁率.418/長打率.515)
▼ ロイ・ハラデー(16年間)
・416試合(2749.1回)
・203勝105敗1セーブ
・防御率3.38
ムシーナの年度別成績
▼ オリオールズ
91年:12試合 4勝 5敗/防御率2.87
92年:32試合18勝 5敗/防御率2.54
93年:25試合14勝 6敗/防御率4.46
94年:24試合16勝 5敗/防御率3.06
95年:32試合19勝 9敗/防御率3.29
96年:36試合19勝11敗/防御率4.81
97年:33試合15勝 8敗/防御率3.20
98年:29試合13勝10敗/防御率3.49
99年:31試合18勝 7敗/防御率3.50
00年:34試合11勝15敗/防御率3.79
▼ ヤンキース
01年:34試合17勝11敗/防御率3.15
02年:33試合18勝10敗/防御率4.05
03年:31試合17勝 8敗/防御率3.40
04年:27試合12勝 9敗/防御率4.59
05年:30試合13勝 8敗/防御率4.41
06年:32試合15勝 7敗/防御率3.51
07年:28試合11勝10敗/防御率5.15
08年:34試合20勝 9敗/防御率3.37
文=八木遊(やぎ・ゆう)