今年も停滞しているFA市場
日本では2月1日が野球界のお正月。アメリカでも各チームの投手組がキャンプに入り、日本から新たに海を渡った菊池雄星(マリナーズ)の動向などが伝えられているが、今年もFA市場は停滞している。
2月も半ばに差し掛かっているなか、今オフの目玉であるブライス・ハーパーとマニー・マチャドの所属先が未だに決まっていない。ここにきてホワイトソックスやフィリーズ、パドレス、ジャイアンツといった複数のチームの名前が新天地候補として連日伝えられているが、このまま野手組のキャンプインを迎える勢いだ。
ヤンキースも候補に…?
ヤンキースといえば、これまでハーパーやマチャド級のFA選手には積極的にオファーを出し、そして獲得してきた。ところが、ハーパーとマチャドに対するアプローチはやや消極的。なぜなら、ヤンキースの選手層はすでに補強の必要がないほどに厚いからだ。
現時点で予想されるヤンキースのスタメン野手、そして先発ローテーションとクローザーは次の通りである。
▼ 2019ヤンキース・予想スタメン
1(左)ブレット・ガードナー
2(右)アーロン・ジャッジ
3(中)アーロン・ヒックス
4(指)ジャンカルロ・スタントン
5(捕)ゲーリー・サンチェス
6(三)ミゲル・アンドゥハー
7(二)グレイバー・トーリス
8(一)ルーク・ボイ
9(遊)トロイ・トロウィツキー
▼ 予想先発ローテーションとクローザー
エース:ルイス・セベリーノ
2番手:ジェームズ・パクストン
3番手:田中将大
4番手:J.A.ハップ
5番手:CCサバシア
守護神:アロルディス・チャプマン
こうして見ると、メンバーはほとんど昨季と変わっていない。
野手でいうと、遊撃のポジションがトミージョン手術を受けて今季の大半を休むディディ・グレゴリウスから、新加入のトロウィツキーに変わったくらい。先発ローテーションも、トレードで移籍してきたパクストンが新たに加わっただけだ。
ドリームチーム誕生なるか…
しかし、野手の控え組やセットアッパー陣に目を移してみると、その選手層の厚さが際立っていることがわかる。
一塁のポジションをボイドと争うグレグ・バードは、昨季こそ打率.199、11本塁打と苦しんだものの、数年前まではメジャー全体でも屈指のプロスペクトとして将来が嘱望された選手だ。年齢もまだ26歳と若く、レギュラーとして出場機会を与えれば、30本塁打以上打てる潜在能力を持っている。
また、ロッキーズからFAで移籍してきたDJ・ルメーヒューが2年契約を結んだ。二塁手としてゴールドグラブ賞を3度も受賞。メジャー屈指のミート力を誇り、2016年にはナ・リーグ首位打者にも輝いた30歳の好打者である。
ヤンキース以外のチームなら中軸を打ってもおかしくない選手だが、今季は本職の二塁以外に三塁と遊撃も守るユーティリティープレーヤーとしてチームを支えることになりそうだ。
そして、外野はさらに層が厚い。外野も守れるスタントン以外にも、昨季全休したベテランのジャコビー・エルズベリーに加え、かつてのトッププロスペクトであるクリント・フレージャーが外野の一角を狙う。特にフレージャーはガードナーの後釜として期待されており、チームの若返りのためにもその成長が待たれる。
先発投手陣も、5人そろって実績は十分。通算246勝のサバシアが5番手に控えており、平均年齢はやや高いが、5人のうち3人が左腕という点は心強い。さらにキャンプで5人を脅かすような若手投手が出てくれば、言うことなしだろう。
救援陣はさらに充実している。チャップマンを支えるセットアッパートリオ(デリン・ベタンセス、ザック・ブリットン、アダム・オッタビノ)は、おそらくメジャーでも最強。ベタンセスとオッタビノは奪三振能力にすぐれ、ブリットンは守護神としての実績もある。この3人も、ヤンキース以外なら守護神を務めるだけの実力の持ち主だ。
先述した通り、ハーパーもしくはマチャドがヤンキースに加入する可能性は決して高くない。だが、もしどちらかが加われば、今季のヤンキースはまさにドリームチームになるだろう。
日本では巨人がこのオフに大補強を敢行したが、ヤンキースの選手層は巨人ファンもびっくりの厚さを誇っている。
文=八木遊(やぎ・ゆう)