ルーキー豊作のナ・リーグ
9月に入り、海の向こうメジャーリーグもレギュラーシーズンはいよいよ大詰め。地区優勝・ポストシーズン争いが激しさを増してくるなか、“個人の戦い”というところにもスポットが当たる時期になってきた。
近年のメジャーリーグの傾向として、若手の有望株がメジャーに昇格してすぐに結果を残すというパターンが目立つ。今季はそれが特に顕著で、なかでもナショナル・リーグの新人王争いは近年まれにみる大混戦となっている。
まずは本塁打王争いを演じているメッツのピート・アロンソ。現在44本塁打はコディ・ベリンジャー(ドジャース)と並ぶリーグトップの数字で、この夏にはルーキーながらオールスターゲームのアトラクション「ホームランダービー」を制するなど、1年目からその名を全米に轟かせている。
ルーキーの本塁打王と言えば、わずか2年前の2017年にアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が輝いているが、ナ・リーグに限れば1906年までさかのぼる。アロンソには実に113年ぶりの偉業達成がかかっているのだ。
さらに、アロンソには打点王の可能性も残っている。現在の打点数は104でリーグ6位も、トップのフレディ・フリーマン(ブレーブス)とは10点差。まだ20試合以上を残しており、逆転も不可能ではない。
最大で4人にタイトル獲得の可能性!
アロンソに負けじと首位打者争いの方に参戦しているのが、パイレーツのブライアン・レイノルズだ。現在のところ、ナ・リーグの打率部門トップはアンソニー・レンドンの.338。レイノルズは.331で堂々の2位につけており、逆転を虎視眈々と狙っている。
これまでにルーキーで首位打者に輝いた選手と言えば、1964年のトニー・オリバと2001年のイチロー、この2人だけ。オリバとイチローはともにア・リーグで首位打者に輝いた選手であり、もしレイノルズが首位打者のタイトルを手にすれば、ナ・リーグでは史上初の快挙ということになる。
また、どうしても野手の方に目が行きがちだが、投手の個人タイトル争いでも2人のルーキーが奮闘中。ブレーブスのマイク・ソロカはルーキー離れした投球術で防御率2.53をマーク。リーグトップの柳賢振(ドジャース)は2.35で、その差は僅かだ。球宴後に限れば柳が3.72とやや打ち込まれているのに対し、ソロかは2.70と安定した投球を継続中。逆転の可能性は十分にあるだろう。
最後に、カージナルスのダコタ・ハドソンも忘れてはいけない存在だ。昨季は中継ぎとして26試合に登板したが、新人王の資格は持ったまま。今季はここまで14勝を挙げており、トップを走るスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)とは2勝差。防御率は3.53、「純粋な投手個人の能力を図る指標」として提唱されているFIPも5.00と投球内容自体はなかなか褒められたものではないものの、勝ち運をうまく味方につけている印象だ。
このように、最大で4人のルーキーにタイトル獲得の可能性がある今季のナ・リーグ。新人王争いの行方とともに、どのルーキーが個人タイトルを獲得するのかにも注目が集まる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)