もう見ない日はない?
コロナ禍で開幕した今季のメジャーリーグ。なかなか試合を消化できないチームもある中、"ある異変”が起こっている。今やメジャーリーグでこれを見ない試合は皆無と断言していいだろう。メジャー特有の「守備シフト」のことだ。
守備シフトと一口に言っても様々だが、一二塁間に内野手が3人偏る形で守るものだったり、二塁手を右翼手定位置のほぼ手前まで下げたりするものまでさまざま。時には外野に4人を配置するなど、強打者に対抗するため、そのバラエティーも豊富になってきている。
2010年頃から目立ち始めたこの作戦。その頻度が年々増加しているというのは、誰の目にも明らかだ。
2010年と昨年を比べてみると、その数は実に16倍以上に激増。今季も8月6日終了時点で、162試合換算なら“7万”を超えるペースとなっている。
▼ 守備シフトが敷かれた時の打率と打席数
2010年:率.317(3323)
2011年:率.298(3065)
2012年:率.318(6176)
2013年:率.304(8545)
2014年:率.305(14972)
2015年:率.307(24486)
2016年:率.310(34801)
2017年:率.305(33218)
2018年:率.305(40730)
2019年:率.303(55042)
2020年:率.271(4964) ※現地時間8月6日現在
└ 162試合換算では「72666」
サンプル数が少ないから?分析が進んだから?
データサイトの『Fangraphs』は、この守備シフト時の成績をまとめており、抜粋したものが上記の表だ。
なお、打席数というのは本塁打や三振といった守備シフトに無関係だった打席を省き、“シフトを敷いた時に前に飛んだ打球の数”をカウントしている。そのうち、“どのくらいの確率で安打になったか”が、ここでいう「打率」である。
まだ守備シフトがそれほど多くなかった“黎明期”の2010年から2012年の3年間では、「打率」が.317から.298に、そこから.318へ…とややブレ気味。ところが、2013年以降は.303から.310の間に収まっており、ほぼ横ばいで推移していることが分かる。
しかし、今年になって、守備シフト時の「打率」はなぜか.271まで急落している。開幕が大幅に遅れたことで、例年よりもオフが3カ月長く、ライバルチームの分析に時間を費やせたからだろうか。それとも、単にまだ試合数が少ないためなのか…。
近年の傾向からも、今年の「打率」も例年の3割前後へと徐々に近づいていく可能性は高いだろう。それとも、守備シフトが完成の域に達しつつあるのだろうか。数週間後にはある程度、解明されるだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)